北くん来た

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「こんにちは、私の悩みは友達関係です。最近クラスで＿＿」

そこに書かれていたのは、クラスの中の小さないざこざが、派閥を巻き込んだものになりそうだというものだった。私の勘からして、そこまで大きなものにはならないだろう。
それでも、この手紙の差出主が心を痛めているのは確かで、そうである以上はきちんと回答しなければならない。

最後に書いてある、ペンネームならぬお悩みネームまで読んで顔を上げると、真剣な顔で考え込んでいる北くんがいた。端正な顔立ち……じゃなくって、実に頼もしい。

「女子って複雑なんですね」
「……んふ」
「なんで嬉しそうなんですか」
「北くんにも、分からないことがあると思うと嬉しくて」

なんですかそれ、と膨らんだ北くんのほっぺたをつつきたい気持ちをぐっと抑え、手紙に目を落とす。性別が違うから分からないことはあって当然なのだけれど、なんとなく嬉しかった。

ぶっちゃけてしまうと、この後輩はなんでも出来すぎて私の立場が無いような気がするのだ。そういう相手だからこそ、パートナーに選んだわけだけれども。

「これ、お願いします」
「はいはい」

破られたノートの端にサインペンで走り書き。雑に見えるその手紙は書いた人の照れ隠しがはっきりと見て取れた。

悲しい相談もあれば、こんな風にこちらまで幸せにしてくれるような相談もある。たまに、お礼のお便りも入っていたりする。だから、私はこの仕事が好きなのだ。

その後も2人でわいわい……というよりは淡々とお悩みを解決していく。相談箱が空っぽになり、代わりにお返事箱がいっぱいになった頃には、窓の外のグラデーションは暖かい色合いに変わっていた。