守りたい人がいる。 (ページ5)

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3話ページ5

BARのドアを閉じてしばらく歩いたAはその場に

しゃがみこみ

『はーー』

と深いため息を吐いた。頭に浮かぶのはいつものようなニ

ヤニヤとした義爛の笑顔と声でなく、本気で心配した義爛

の顔だった。

あんな風に誰かに優しく心配してもらったのはいつぶりだ

ろうか。とても久しぶりに心配されどう反応したら良いか

分からなかった。

いつもの取引相手は、私の心配なんてしない。

彼らはもちろん私も自分たちの利益のために手を組んでいる。

でも義爛は違う、私がこの世界で生きてこられたのも彼の

おかげだ。

感謝してもしきれない本人には言えないが、私は彼を父親

のように思っている。

あちらは、私のことなんてちょっと仲の良い仕事仲間とし

か思ってないだろうと思っていたので、今日の心配された

こと驚いたけど、素直に嬉しかった。

親がいたらこんな風に心配してくれたのかななんて柄にも

ないことを考えたりする。

いや、こんな意味のないことやめよう、今考えるべきこと

は別にある。深呼吸をして、深く暗い闇の中へと歩き始め

た彼女の瞳には強い決意が表れていた。

カードキーを差し込んでマンションのドアを開ける。

部屋に入った彼女は纏めていた髪を下ろし、レースのつい

た黒のミニドレスを脱ぐ、そして部屋着であるオーバーサ

イズのお気に入りのパーカーをきてヘッドフォンをつける

これが彼女の家での仕事着である。仕事着(部屋着だが)

に着替えた彼女は早速義爛に言われた条件を満たすために

パソコンのキーボードを叩き始めた。