蒼眼病(inar)

、 ページ9

有岡side


有｢ねー伊野尾先生ー｣


伊｢なに？｣


有｢…伊野尾、先生｣


伊｢…大ちゃん？｣


有｢んんー…｣


伊｢ちょ、ほんとにどうしたの…｣


有｢俺も伊野尾先生の事あだ名で呼びたい！｣


伊｢え、｣







せっかく俺の主治医なんだよ！？


先生本人が言ってたけど、こんな風に担当持ってるのは俺だけらしいし。


｢名字に君付けは堅苦しい｣なら、名字に先生も堅苦しいよね。


…まあ先生なんだから当たり前なんだけど。









有｢伊野尾先生って下の名前なにー？｣


伊｢…慧｣





へえ、慧…か。






有｢良い名前だねっ！伊野尾先生っぽいし。…じゃー、慧、くん？とか？｣


ちょっと試しに呼んでみた。


…呼んでみただけなのに。


伊｢ちょ、っとそれは…、別のにしてくんない？｣




耳まで真っ赤にしてる伊野尾先生。


…え、今のどこに照れる要素があったんだ？




有｢さては伊野尾先生…普段名前呼びされてないな？｣


伊｢…ん？｣


有｢そりゃ恥ずかしいよね、慣れてないんだもん。でも俺は保育園から今までずっと名前呼びされてたぞ！｣


伊｢え、いや…昔は普通に名前呼びされてたけど…｣


有｢あれ？｣




てっきり慣れてなくて、慧って呼ばれるのがくすぐったいからだと思ったんだけど…。





有｢じゃなんでそんなに照れてんだよぉ…｣


伊｢…うるさいよ｣






なんか友達っぽくて良いと思ったんだけどなー、慧って呼ぶの。






有｢んー…あ、じゃあ伊野ちゃんは？｣


伊｢慧呼びじゃないならなんでも良いよ…｣






そんなに俺に名前呼ばれるのが嫌か笑







有｢じゃ伊野ちゃんね！…あーでも、ちゃんと敬意を示して先生付けるわ！｣


伊｢無駄なとこに敬意示したね｣


有｢つまり伊野ちゃん先生ってことかぁ〜｣


伊｢…ふ、伊野尾先生って呼ぶより長くなってるじゃん｣


有｢あり？まあいいのいいのっ！｣







うん。良いの、これで。


でも、こうやってあだ名で呼ぶのは、今みたいに二人だけの時にしようかな。








そんな事を、心の隅っこで考えていた。

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