U-17に存在した虚無の番号 Second Games (ページ10)

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Tennis match No.59 ページ10

勘には勘で返したい所だけど、現状で彼の事に関して勘を使って答える事は難しい。彼を知らないのは勘を扱えない事になる。少しだけ悔しさを覚えたかも知れない、でもそれを隠す事くらいは得意だからバレない様にする。

「…何か、あったかもね。何があったかの予想はできる？」

問い掛ける時も緩慢に。決して焦ってはならない。焦った事で情報を取り落とす事はよくある話。…記者の人が確かに、そんな感じではあるじゃないか。本当にそうならば、問題の様な気もするけれど。

「あー…分からんですけど。白石部長からメール来てますよ」

「…わ、私宛て？」

「何であの人がここを知ってるのかは知らんですわ。まあええんやないですか、あの人はやたら鋭いですし」

「…拝借しても？」

「どうぞご自由に」

本当に、白石くんの洞察力か何かには驚かされる。永四郎と奏多が居たから分かったのか、それとも本人の力量だけなのかが判断できないけど流石だと思う。財前くんが見せてきた白石くんからのメールは本当に私宛てのもので、確認として彼は先に見ていた様だ。困る様な内容が書かれている訳じゃないだろうから別に構わないけれど。見せられたスマートフォンを受け取り、メールを読み進める。すると。

そこに書かれていたのは、ナタリアが本気であの場に彼女の温室(ハーレム)を作り上げたという事。私が運び出されていた事に関して永四郎が全てを見ていたという事。白石くんが何故財前くんのスマートフォンにメールを送り付けた理由。そして私が眠らされたという原因。それに関しては永四郎が眠らされたと仮定したからであろう。…短時間でここまでやるかな、本当に。何だか嘘っぽいんだけど。

「内容、分かります？」

「…当事者だから」

「…アンタ、何抱えてるんすか。一人で抱え込むより周りに頼った方がええんとちゃいます？」

「忠告を有難う。でも私は迷惑を掛けたくないから」

ゆっくりと、体温が戻る感覚を掴む。指先にまで体温が巡ったらようやく身体を動かす事ができそうだった。まだ冷たい指先を掴まれた感覚が鈍いなりにも感じ取れて、手元へと目を向けると。財前くんの手がぎこちなくも私の指先を包んでいた。決して私の方を見ようとしないのは彼なりの照れ隠しなのだろう。理解ができると同時に擽ったくて…でも何故突然こんな動作に走ったのか。彼はそういうタイプでは無いと勝手に思っているから私は内心で挙動不審気味だ。そっと、彼にスマートフォンを返す事に。