U-17に存在した虚無の番号 Second Games (ページ45)

今日:7 hit、昨日:7 hit、合計:40,727 hit

Tennis match No.94 ページ45

テニスを楽しいと感じながらラケットを握り、ボールを追い掛ける。蔵と共にコートを縦横無尽に走り回っている時間がとても面白く、堪らない。それに対して、相手である幸村くんと跡部くんには焦りが現れている。誘発出来るミスの数が増え、点差は既に縮まり、私達の方が彼等を置いて先に進む。

イップスに陥る前は私達が5ゲーム、彼等が4ゲーム。
イップスから脱した際の私達は変わらず、彼等が6ゲーム。
そして…今の私達は既に7ゲームを取っていて、彼等は変わっていない。残りは最短で四球と見た。

私を含めた、コートに入ったままの四人の息切れがずっと続く。どれだけ時間を掛けているのだろうか。確実に、朝とは言えない時間になっている…と勝手に認識しておこう。すっかり高い陽は時折雲に隠れるけれど、それでも晴天は続く。

…暑い。

この時期、普段なら寒い中でこの陽を浴びれば暖かい程度なのに、動きを止めずに頭を使っている所為か否か、どうにも汗が止まらない。無駄に体力を消費している可能性を考慮しながら、私は上がったロブを叩くべく飛び上がる。瞬発力と重力を使ってボールを打ち落とすもそれを防がれ、私が着地しようとした地点に跳ねたボールを蔵が返す。重い打球はあまり跳ねずにネットを越えた。

残りは、三球。

一気にケリをつけようとして、蔵が前へ出た。それに合わせて私は後ろに下がる。前後交代だ、最後くらいは決めさせてくれるらしい。変な所に気を遣う彼らしくて、私としては嬉しいんだけどそれは無駄なんじゃないかとも思うなあ。相手のサーブで、バウンドを一度。それを難無く返しても攻めの色を変えない蔵。彼が返せない位置に落ちた球は私が全て拾う。そろそろ駄目になりそうなのは向こうの精神だろうか。苛立ちを露にする二人に対して、動き続けるのは私達。少し浮いたボールが返ってきた瞬間、彼はラケットで返球する時に横へ急回転を掛けた。その球が着地した瞬間、十二の球程に分身して円運動を始める。それを返すのには無茶がある。それを返そうとして、どうにも上手くいかなかったのは幸村くんの方だった。彼は分身を許したりなどは無かったから…それだけ精神が掻き乱されているのだろう。

「んん～っ、絶頂(エクスタシー)…」

普段の調子を取り戻した彼の表情を覗く。随分と、楽しそうに見えて私が安堵してしまった。その矢先に視線はばっちりと合い、やたら嬉しそうに微笑まれては、別の理由で鼓動を跳ね上げる事に。

あと、二球。