Tennis match No.81 ページ32
「私は、荷が重いと思ってしまうのが一番失礼だと分かっているけど…今の状況でこの立場、とても荷が重いし、プレッシャーは強い。…テニスが掛かってるんだ、多少は許してね」
風に乗せる様に、言葉を発する。真っ先に反応したのは、やたら私に懐く蔵。…そこまで、私は慕われる様な人間じゃないと思ってるし、何しろ…好きだと言われる様なタイプじゃない。
「そうだ。奏多」
「何だい？」
「…謝っておくね、ごめん。もっと相応しい人が居ると、思うから」
「…気にしないで。ほら、行っておいで。僕達は此処で待ってる」
奏多は、私の言葉の真意を正しく汲み取ってくれたのだろうか。その心配はどうやら杞憂に終わった様で、コートを向く際に見えた瞳は潤んでいた様な、気がした。
奏多や永四郎、革命軍の面子に背を向けると共に視界にもう一度映るのは、先程零した言葉に反応を残す蔵の姿。どういう目的で、私の行く手を阻むのか。
「…蔵」
「嫌や、Aさん。俺は…」
「…そこを退いて。必ず、勝つから」
「勝てるかどうか分からへん！Aさんの身体は既に限界迎えとるんやから！」
…まるでこれじゃ、激昂されているのと何ら変わらない。彼が私を心配しているのは分かるけれど、その話は言う必要が無い。肩の荷を、力を、緩やかに落とす。そのまま、彼の胸板に拳をそっとぶつける。
「…じゃあ、ダブルス組もうか、蔵」
「なっ…！白石さんがアンタなんかとダブルス組める訳無えだろ！」
急に出現する声の主はすぐに判別、鋭さを帯びた声音でそっと名前と共に文句を叩き付ける。私は私自身の運命を背負っているんだから、邪魔をしないで。
「煩いよ、切原赤也くん。君に判断を託してなんかいない。…さあ、どうする？」
「…どうしたって、この争いは止めんつもりで居るん？」
「これ以上、私以外の人間が此処で似た境遇に陥って欲しくないんだ。その為に、鎖を断ち切る必要がある。…必ず勝たなければいけないものだ。君が止めるというのなら私は切り捨ててでもいかなければいけない。…それで、ダブルスを組むのなら君が私をサポートしてくれる？そうしたら、限界なんて超えられる」
「…ダブルス、組もか」
「そうこなくっちゃ。期待してるよ」
とん、と。一度、蔵の胸を指先で叩いてから、革命軍の中から彼の友人を探し出す。…ああ、居た。金髪…と言える領域の色合いの髪を持つ、人物。蔵も彼を見付けては部屋の場所を告げ、ラケットを持って来て貰う事に。
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月14日 23時
