Tennis match No.53 ページ4
三船コーチと話し込みそうになる前に、裕の元へと戻る。すると、夜の暗さに慣れた視界で彼以外の人物を見つけた。…シルエットからすると…？
「おい」
「…皇帝？」
「その声は、向坂Aとやらか」
皇帝こと真田弦一郎だった。呼び捨てにされているとは。構いはしないけど、ちょっとねえ。…と、思いながらに口を開く。今の状況を今一度把握したいのもあるし、彼は理解をしているだろうからという憶測の元で話をしたかった。
「真田弦一郎くんで良いね？」
「ああ」
「…私がこんな時間にここにいるのも理由があるんだけど。他のメンバーの行方も聞きたいし、合宿所での話も聞いて貰いたいんだけど…ああ、三船コーチには話したから気にしないでくれて良いよ」
「…なら良いだろう」
「有難う」
地面に座り込むも洞窟の肌寒さが痛い。指先に息を吐くと白く登った。そんなに冷え込んでいるのか。足元から冷え込んで来る空気が憎たらしい。後は、半袖の白いシャツを着た真田くんや裕が寒そうにしていない所を見ると…まだまだ鍛えられるんじゃないかと思う。性別差はあれど、限界まで鍛えたら寒さも薄らぐのか、ぼんやり考えていると肩に何かを掛けられた。
「…良いの？」
「…良い。お前に病を患われては困るからな」
「Aには
「やかましいぞ！甲斐！」
肩には彼がつい数日前まで着ていたジャージ。特に気にはしない。本人の目元が赤いのは薄らと見えたからそれは言わない様にしないと真田くんは沸騰してしまうだろう。
周囲には裕と真田くんだけ。遠くから…足音はいくつか聞こえる。思わず身構えてしまったけれど二人しか知らない話だ。私自身だってほぼ無意識に身構えていたから脳が記憶をしなかった。現れた人影は結構な数があり、私の存在に気付いた人物もそれなりに居た。
「おねーさん、何でここにいるの」
「…越前リョーマくん」
「そ。質問には答えてくれるんでしょ？」
否定を受け取らないといった様子に彷彿としたのは隣にいる裕の片割れに近い彼。…今頃はどうしているのか。私がこうやって連れ出されてしまっている事を今は知らないだろうし…夜中だし。眠ってるか…それとも心配で起きたままとか。永四郎だかありえそう。それはそれで私の方が心配だけど。ともかく、越前くんとその後ろの彼らにも状況は伝えておかないと…だろう。
現状を教え切って、寒さに塗れた身体を摩る。…すっかり全員集まった様だ。
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月14日 23時
