脣星落落.6 ページ37
蒙恬 「あっ…A…」
繋がれた手が離れてゆく事に、どこか心がチリッと焦げつく。蒙恬にとって、彼女は空気と一緒だ。まるで水がないと生きていけない魚のように、彼女が少しでも離れていく事に耐えられない。
心の底から愛するが故に、彼女を奪い取っていく者に対して嫉妬心を隠せなかった。
そんな蒙恬の内心も知らずに、信が能天気に声をかけてくる。
信 「なんか…A、色っぽくなったか?」
こしょこしょ…と蒙恬の耳元に囁くようにかける、その顔は下心丸出しの男の顔だった。
Aとの甘い空間を邪魔された事との怒りもあり
思いっきり信の足を踏みつける。
信 「痛っテェー!!何すんだ!蒙恬ッ!」
蒙恬 「……言っとくが、次に人の嫁を変な目で
見たら、信でもタダじゃおかないぞ」
普段明るく調子のいい蒙恬だが、
キレると誰よりも恐ろしいと身に染みて感じだ。
信 「なっ!周りよく見ろよっ!!
俺以外だってそーだろっ!」
信の言葉にハッと気づき、周りを見ると
確かに女性たちの中で、はにかむ笑顔の彼女に
周囲の男達が頬を紅潮させて、羨望の眼差しを送っているのが見えた。
蒙恬 「くッ…!!(不覚ッ!)」
美しいAと町を歩くと、こんな光景はいつもの事だった。だが、自分がしっかりと彼女を守り、周りの男達を牽制してきたつもりが、今日は不意打ちを食らって油断していた。
白いうなじが見え、まとめ上げた艶髪に刺した
朱い簪のせいだろうか…
それとも、抑えきれず毎夜彼女を求め、
大人の女として開花させてしまったからだろうか…
たしかに、今のAは
町を歩くだけで、誰もが振り向き、その色香に
見た者が頬を赤く染める程の美女へと成長していた。
変な虫がつかないように、自分が守っていたつもりが、目を離すといつもこれだ。
急いで彼女の元へ向かうと、能天気な程無防備な笑顔ではしゃいでいた。
A「あっ!恬!…いつぞや、
お茶屋さんで貂達に迷惑をかけてしまったから、
今から皆でお茶しない?って話に
なってるんだけど…」
蒙恬 「…そっか。じゃあ、行こう」
A「…わっ!」
話の半分も聞かず、Aの手を無理やり引っ張って
大股で歩き始める。
「蒙恬のおごりだからなっー!」と河了貂が叫ぶ声を無視して、周りの男たちにAは俺の女だと牽制した。
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脣星落落:明け方の星が一つ一つ消えて行くように大切な物が一つ一つ消えて行く哀しさ。
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夏目 - 私も蒙恬推しなんで嬉しいです。もし蒙恬の子供ができた話も見てみたいです (2021年10月31日 7時) (レス) id: 1b00569172 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:09kokoa | 作成日時:2020年9月19日 10時