月下美人の君【蒙恬ルート.2】 (ページ32)

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脣星落落ページ32

蒙恬「………A」

彼女の存在に気づいたのか、体を反転させ

こっちに向いて甘えるように抱きついてくる蒙恬。

A「……恬。いつもありがとう。

今日は私が、恬の悲しい気持ち…ぜんぶ

受け止めてあげる。

だから、…無理しないで。

一人で抱え込まないで…。

私も一緒に背負わせて…？」

気持ちがいっぱいいっぱいで抱えきれない時も、

父の死の時も

彼はAの悲しみを全部受け止めてくれた。

こんな時こそ、自分も彼の力になりたかった…。

柔らかい蒙恬の髪を撫でながら、

甘えるように抱きつく彼を、

やさしく抱きしめ返す。

すると、蒙恬はたがが外れたように

突如獣のようにAの上に覆いかぶさる。

見上げた彼の顔は、悲痛に耐えた表情で

どんなに強く手を握られても、

無理やり押さえつけられようとも、

すべて受け入れるように、Aは微笑んだ。

蒙恬「…Aっ……、俺…」

A「…恬、大丈夫だよ。

どんな恬でも愛してる…」

蒙恬「…ッ！…A、A！！」

A「……恬。大好き」

我を忘れたように、Aの名前を叫びながら

その体を必死に求めた。

迫り来る悲しみから逃れる為に、

そのすべてを彼女の体に打ち付けようにして

吐き出した。

どんなに酷く抱いても、彼女は逆らう事もせず

母性の塊のように包み込んで受け入れてくれた。

余裕のない蒙恬と、

悲しみを受け止めるのに必死なAは

気がつけばお互いに気を遠くにやって、

涙にくれる夜をなんとかやり過ごした。