月下美人の君【王賁ルート.2】 (ページ5)

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Night Diver.4 ページ5

彼女の笑顔を久しぶりに見れただけで、ここ数日の憂鬱は吹っ飛んだ。やはり、俺にはAが必要だ。

そう改めて再確認し、安心したら
頭に浮かんできたことを口にしていた。

王賁「…今日の夕食は、美味かったな。

ここら辺の魚は、秦国で取れる物とはまた違うのか」

A「水温が温かいから、種類も違うかもね。

かけておいた塩も、いい感じに合ってたし…」

王賁「……塩？」

A「あっ……海水から取れるんだけど、

魚とか食材にかけると美味しくなるの！

賁くんの口には、合わなかった…？」

王賁「いや、
…今まで食べた魚で一番美味しかった」

A「良かった！」

そう言って両手を合わせて、ほころぶ笑顔を見る。
姫である彼女が、料理や食材について詳しいのは
とても意外だった。

A「って…
本当に姫に必要のない知識ばっかりだったね」

その事が顔に出ていたのか、まずい…という表情をAが浮かべた。

王賁「いや、
そこまで博識だった事に驚いただけだ。

お前が人よりも努力家なのは、知っている。

その知識も、日頃の努力の賜物だろう」

A「いつも、お説教する癖に…」

王賁「…お前を心配するが故だ」

ククッと笑った王賁の顔を見るのは、
やはりまだ見慣れず
今でもドキドキと心臓が速まる。

A「…今日の賁くんは別人みたい。

普段言わない事ばっかり」

王賁「たまには、お前を甘やかすのも悪くない」

A「…もうっ//」

照れ隠しで言った言葉でさえ、
甘く返されたら、何も言えない。

普段他人にも、自分にも厳しい彼だが
甘やかしてくれる王賁も、大好きだ。

Aがそうはにかんでいると、
その嬉しそうな笑顔が逆に王賁の胸を刺す。

王一族宗家の嫁に嫁ぐとなれば、
許されない事柄も増えてくるだろう。

そして…

幼少期から胸に渦巻く出生の闇を

結婚を約束した彼女に話さなければならない…と

思った。

きっと、自分から他人に口にするのは決めたのは

初めてだ。

王賁の雰囲気がガラリと変わった事に驚き、
目を開く。

彼の辛そうな顔に、どうしたのか…と心配が尽きないが、その雰囲気が易々と口を開かせてくれない。

Aは彼を見守りながら、

その重い口が開くのを待った。