月下美人の君【王賁ルート】

恋愛不適合者.7 ページ49

王賁 「どういう意味だ…」

関常 「どうもこうも…。恋人の為に軍を動かすなどまさに愚将の行いですぞ。

恐れながら、調べさせてもらいました。

猫耳の美女…いえ、
胡蝶隊隊長・A様との関係のことを。

あの美しさ…私も初めて見ましたが
秦国の女神の名にふさわしい。

まさか、若君様の恋人であったとは
初耳でしたが…。

男としては、羨ましいかぎり…」


王賁 「関常ッ貴様！…何故、Aのことを調べた！返答次第ではただではおかぬぞッ！」

Aの名前が出れば、冷静ではいられない王賁。

関常 「若君の為を思えばこそ。

次期当主として、若君のお相手は本来
殿がお決めになる事です。

…婚前前に身を汚す事が、どれ程恐ろしいか
想像できぬ若君でもないでしょう…」

その言葉は、屈辱以外の何者でもなかった。


王賁 「お前に心配されずとも、
俺はAを娶り、一緒になる。

誰に何と言われようとも、必ず。

…例え、それが父上であっても」


関常 「…王一族の名を汚すおつもりか？」


番陽 「関常！今その事は、関係なかろう！
賁様とA様の仲に口を出すでない！」


関常 「…若の暴走を止めるのが、本来あんたの仕事だろ！それをこうなるまで、見守っているとは…。
職務怠慢だそ、番陽副長」


王賁 「関常…。
勝手にAと結婚は無理だと決めつけるな。

父上が認めぬのなら、認めさせればいいだけの話。

…俺と彼女を、あまり甘く見るな」


そう言って出立の準備に差を背ける王賁。

近くにいるとすれ違う癖に、

お互いがお互いを想っている覚悟だけが、
関常を黙らせた。


関常 「ッ！！…(なんなのだ、この二人は)」

王賁が去った後、苦虫を潰したような顔で立つ関常の肩に番陽が手を乗せる。



番陽 「あのお二人は…

いずれ、我々が想像もつかない高みに登られる。

A様は、普通の姫様ではない。

その武功・美貌は、今や中華全土の男達が欲するものとなった。

その姫が、金も名誉も関係なく

ただ一人の男として、王賁様を愛してくださる。


それは、賁様も然り。


そのように想い合う二人を、

儂風情がどうして邪魔だて出来ようか。


きっと、王翦将軍も分かってくださるはずだ…」



関常 「しかし…これで叶わぬ恋となれば

傷つくのはA様の方だぞ…」


番陽 「そうさせぬように、儂らが二人を信じ

その背を支えるまでだ…」


関常 「…勝手に俺も含めるな」

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