月下美人の君〜外伝〜

【王賁】氷姫との恋.16 ページ38

桓騎「この女ッ！」

急に身体が動かなくなったと思ったら、口から血を流すAがいた。


桓騎「チィッ！！……おい、黒桜を呼べ」


珍しく一人の女に気分が高ぶったと思ったら……興醒めだ。
目の前に広がる美しい裸体は、成長したら化けるだろうと…桓騎はゴクリと喉を鳴らす。
他の男の名前ばかり呼ぶ、うざったい女だったが、
なぜか殺そうとは思わなかった。


桓騎「……手当してやれ。…死なすなよ」



★


すっかりあたりも暗くなり、森を進んでも自分がどこにいるのかさえ、迷ってしまいそうだった。
全員汗だくのまま、それでも王賁は走り続けた。


すると、茂みのの中にかすかな人影が見える。
それが視界に入った瞬間に、疲れなど投げ捨てて王賁は全力で抱きしめた。


王賁「……Aッッッ！！！」


意識がなかったが、息はしていた。
手や足に縛られた痕があり、身体中に赤い華が咲いていることから
王賁は彼女の身に何があったのか悟り、背筋を凍らせた。



王賁「俺っが…、俺が…、守るって、言ったのに…」

Aを抱きしめる腕が震える。
彼女が生きてて良かったと思うと同時に、その存在を守れなかったことに
王賁は自分が許せず、目から悔し涙がでた。


A「………王賁っ」

その声は弱弱しく、少しでも気を抜いたら消えてしまいそうだった。
それでもなんとか、Aは目を開けて王賁にしがみつく。



王賁「っ………！Aっ」



その日の夜から、二人が会うことはなくなった。
そして、それ以来Aは二度と笑うことが出来なくなってしまった…。

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