月下美人の君〜外伝〜

【王賁】氷姫との恋.8 ページ30

城に戻れば、皆が笑顔の仮面をつけたまま接しているが、仮面を取れば、俺の出生や亡くなった母について面白おかしく、蔑んだ目で見つめてくる。
王賁には、それが恐ろしくて仕方なく
徐々に人に対して心を閉ざすようになっていった。

俺の生まれた意味は……
俺が生きる意味は……

そんな環境にずっと置かれていると、
そんなことばかり考えるようになった。

これからの人生をただ王家の為に…
そうすれば、家の者も認めてくれる。
生きていて、息をしてもいいと、認めてくれる。
…父上も。
…父上からも認めてもらえる。


その為に、強くならねばならない。
それが俺の責任…。俺が生まれた理由…。


例え血が出ても、骨を折っても王賁は毎日槍を振った。
そうしないと、息ができないとでも言う様に。


だが、10歳にもならない少年がそのプレッシャーを受け続けるには、限界があり、
心よりも身体は素直なもので知らない間に涙が流れたり、寝れない夜の方が多かった。


そんな折に、見知らぬ怪しい少女と出会った。
自分と同世代くらいなのに、器用に木に登ったり降りたりする。
しかも女の子なのに、着物でそれをやるからたまに下着がチラリと見えて、はしたない！と
怒りたくなる。

でも、なぜか俺のことを知らないみたいで普通に接してくる。
しかも、鍛練が終わるまでずっとそばで見つめてくる。


暇なら帰れと言っても聞かないので、邪魔をしなければいい…と無視することにした。


だが、予想外にその関係が居心地が良くて
気づけばお互いに成長して、少年少女というよりも
逞しい青年と、美しい少女に育っていった。

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