月下美人の君〜外伝〜

【王賁】氷姫との恋.2 ページ24

男が抱き付こうとした、その刹那ーー


グシャッ！


Aが動きをかわす際と同時に、その白い足を高く上げ男に振り下ろした。少女のさらけ出された白い足に男の頭を踏まれていて、地面にはピキピキ…とヒビが入っている。


たかが女、しかもか弱く細い身体のどこにそんな力があったのか、周りの見ていた者達は目を見張った。


A「…………………無礼者。」


その可愛らしく、美しい顔からは想像出来ない程、
低い声が場に響く。


昌文君 「………はっ！…ど、どこの隊の者か！先ほど大王様が、山の民と国交をという話をしたばかりじゃぞッ！無礼であろうッ！」



桓騎 「………これは、悪かった。戦続きで女に飢えてた所に、極上の餌が来ちまったもんでね。
そいつの処罰はウチで責任を持ってきっちりする。」

ニヤッと不敵に笑う桓騎には、悪かったという言葉とは裏腹に、悪気を一切感じないものだった。


昌文君 「……チッ！(元野盗め！！)」

大王がいる正式な場で、騒ぎ立てることは出来ず押し黙ることしかできない昌文君。


当のAは言うと、桓騎に目を向けたかと思うと、踏みつけている巨漢の男をなんと蹴り飛ばした。

「ウオッ！」「オイッ」と桓騎軍の突っ込むが、桓騎は相変わらずニヤリとA事を見ていた。


あの巨漢を蹴り飛ばした強さ、着物からはみ出る美しい白い足に、何人かは胸を押さえて動悸が激しくなっている。

Aは何事もなかったかのように、髪をサラッと撫でて、再び政の場所へ向かう。


男達 ((((美しいぃぃぃぃぃッ！)))


政 「……相変わらず、お前の美しさには目を見張るばかりだ。楊端和の妹、Aよ。」


A「………ありがたく。」


そう言った彼女はどこか、冷たく心を閉ざしているようであった。


無事、代役として勤めを果たし、
論功行賞は無事終わった。
四十ニコリともしない彼女は、何を思っているのか周りの者には計り兼ねていた。



シュンメン 「…(姫さんって男嫌いなのに、なんで今日きたんだ？しかも、わざわざ自分から名乗り出て…？)

護衛として同行したシュンメンさえ、
彼女の考えは分かりかねていた。


誰も知らない所でAは
一人心の中で落胆する。


A「……はぁ。
…今日、王賁いなかったなぁ。」


そこには、男嫌いで一切笑わないことから氷姫や魔女呼ばれた女ではなく、頬を赤く染めて恋にため息をついてる少女がいた。

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