月下美人の君〜外伝〜

【王賁】氷姫との恋 ページ23

『月下美人の君』の主人公とは別です。
楊端和の妹。
蕞後の論功行賞以降からスタート



ついに李牧軍を撃退した秦軍。
蕞では住民達と兵士の喜びと歓声が沸き立つ。

それから、一ヶ月の月日が経った。

咸陽では、此度の合従軍戦に対する
論功行賞が行われる。

今回の戦いでは、各所の将をつとめた蒙驁・張唐・桓騎・王翦・蒙武・騰・麃公の七将の功績に序列をつけることは難しく、一将を除き六将には等しく国防の"特別大功"が授けられた。
そしてこの大戦の第一功は、ひときわ武功の厚かった蒙武に与えられる。


次に、今回の論功行賞では、
この七将に継ぐ三つの"特別準功"が与えられた。



政 「山の王 楊端和は山界の戦いの最中故、代理の者が来ている。


…A、前へ……。」


そこに現れた人物に誰もが、目を奪われた。
腰までサラリと流れる艶黒の髪を、無造作に靡かせて歩く女。
その服装は、山の民だからか咸陽の女性の服装では想像が出来ない程、胸元や細いくびれ、細い足がすらりっと歩くたびに着物から惜しげもなく晒されている。
何と言っても、その顔の美しさは中華全土といえ五本の指に入るものだった。


ーーーーー『秦国の魔女』ーーー

彼女がそう呼ばれるのは、彼女の美しさに老若男女関係なく、一目見ただけで心奪われるからだ。
また叩き上げてきた戦果と相まってから、噂が噂を呼び、咸陽でもその名は響き渡っていた。



彼女が一歩一歩歩くたびに、その場の者達は声を失い、ただその神々しさにひれ伏すのだった。


その中でも手癖の悪い桓騎軍を通った時には、「ひゅー」とふざけた声や隅々まで舐め回すようにAのことを眺め、ニヤニヤと薄気味悪く笑う男が多かった。

Aは一目も送らず、真っ直ぐに秦王 政の所まで歩いていく。すると、突然……


桓騎軍の兵士 「おんなぁぁぁあっー！！」


Aの色香に興奮したのか、刺青を入れた太った男が理性なく涎を垂らしながら突進して来た。


文官やある程度地位のある者であれば、ここが正統な場所と弁えがある為、余計に周囲の者を驚愕させた。

シュンメン 「…(姫さんッ！)」
山の民 「…(姫様ッ！)」


護衛は最低限の人間だった。
一緒に来た山の民達は、油断して遠くから見守っていて間に合わない。

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