傷と絆創膏 ページ4
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「⋯じゃあ」
『⋯あ、待って』
「え？」
『⋯あの、これよかったら⋯。』
気まずそうに去っていこうとしたお兄さんを急いで止める。
鞄に入っていたポーチから、可愛らしい犬のキャラクターが描かれている絆創膏を一枚差し出した。
「え、なんで」
『⋯腕。血、出てるから』
「え？嘘、ほんとだ」
夜でもはっきりとわかる白い腕。
何かの拍子に引っ掻いてしまったのか、その綺麗な右腕には小さな引っ掻き傷のようなものがあった。
これこそ余計なお世話かな、とは思ったけど菌が入ったらあれだし。
そう、自分に言い聞かせる。
お兄さんはぺこぺこ、控えめに頭を下げながら絆創膏を受け取れば、目の前で腕に貼り付けた。
てか、犬のキャラクターとか恥ずかしくないかな？
『普通の絆創膏じゃなくてごめんなさい。⋯それ、流石に恥ずかしいですよね』
「いや？俺犬好きだし、なんなら飼ってるから。可愛いです、これ」
腕に貼り付いた絆創膏を指差すお兄さん。
表情はみえないけど、最初より穏やかな雰囲気になっているような気がして嬉しくなる。
『⋯あ、じゃあもしかしてその傷って』
「ん、多分愛犬とじゃれた時に出来たやつかも。全然気づかなかった。わざわざありがとうございます」
『いえいえ！そんな！』
どうしよう、話せば話すほど大我くんだと錯覚してきて謎に緊張する。
いやいや、そんなはずはないんだけど。
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作者名：美虎 | 作成日時：2022年8月24日 21時
