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そういえば俺今日電車で来たこと忘れてた。
やべ⋯ 樹に迎えに来てもらうか⋯。
こんな遅い時間に呼び出すのは申し訳ないけど、なんだかんだ俺に甘い樹なら来てくれるだろうと思い、
携帯を出そうして、携帯のバッテリーが切れてしまったことをふと思い出した。
⋯一か八か。
「⋯あの」
「さっき携帯の充電切れちゃって、良ければなんですけど電話⋯とか貸りれたり、しませんか」
ここはもう彼女に借りるしかない、なんて思えば恐る恐る尋ねてみる。
急なお願いにも笑いながらいいですよ、と快く承諾してくれた彼女。
優しいだけなんだろうけど、不意に心配になる。
この子は誰にでもこんななのか⋯？こんな名前も知らない初めて会った男に携帯を貸すなんて。
優しいとはいえ、危なすぎだろいくらなんでも。
まあそんなこと言っても、余計なお世話だろうから彼女には言わないけど。
「え、俺？」
横で端末を操作し始めた彼女の携帯のロック画を見て思わず声が出る。
そこには今日の昼頃にブログにあげたばかりの俺の自撮りが映し出されていて、
ここで初めて彼女が、俺のファンということに気が付いた。
焦ってマスク越しで自分の口を抑えるけど、
しっかり俺の発言は耳に届いていたみたいで、数秒沈黙が続いたあと、俺をじっと見据えては
『た、大我くん⋯？』
これが、彼女との出会いだった。
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作者名：美虎 | 作成日時：2022年8月24日 21時
