偶然 ページ3
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暑さの交じった微妙な夜風を頬に感じながら、ひたすら駅まで歩くこと、5分。
ていうか意外と駅まで遠いな⋯。
あ、そうだ!YouTubeの前に新曲聴こう。
イヤホンを取り出そうと、足を進めながら徐に鞄を漁っていると、突然走った軽い衝撃。
イヤホンを探すのに夢中になって、前を見ずに歩いていたから前から来た人に衝突してしまった。
『っわ、すみません』
反射的に謝罪を口にする。
「⋯こちらこそすみません」
『お怪我とかしてないですか?』
「大丈夫です、肩当たっただけなんで」
ぺこ、と軽く会釈をした目の前のお兄さん。
黒のバケハを深く被っていて目元はまるで見えないし、マスクも顔のサイズと合っていないのか誰がどう見てもぶかぶかだ。
暑くないのかな?⋯余計なお世話か。
白のTシャツにダボッとした黒のパンツ⋯ふ、と服装に目が行ってしまうのは何故だろう。
お洒落というよりも気安さ重視であろうファッションはどことなく大我くんの私服の感じに似ていて思わずどきり、と胸が鳴る。
⋯心做しか声も、なんとなく似てるかも。
ま、大我くんなわけないけど。
目も合ってるかさえもわからないけど、特に怪我した様子もなく安心してホッと心の中で胸を撫で下ろした。
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作者名:美虎 | 作成日時:2022年8月24日 21時