spare～もう一つの顔～ (ページ8)

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「ジョンイン！」

向こうから聞こえてくる声に一瞬Aではないかと期待する

だけどユナの声だと知ってがっかりしてる自分がすごくバカらしく思えてくるんだ

「…Aのこと好きなんでしょう？見てたらそれぐらいわかるよ…」

「…はは、ばれちった？やっぱユナは頭いいからばれちゃうかなって思った…」

必死に笑顔取り繕う自分が好きじゃない。
顔は見えてないのに、笑顔を作るなんて、、相当焦ってる証拠じゃないか

「…あの子、、鈍感なのよ、ジョンインの気持ち知ってて傷つけたいなんて気持ちはみじんもないはず」

知ってるよ。
誰よりも優しくて可愛い俺の初恋の女の子なんだから。

「ユナは…ホンビンさんどう思う？」

顔は見えないけどユナは今驚いた顔をしてるんだろう

「…かっこいいと思うよ？ただそれ以下もそれ以上もないっていうか。」

ユナは、ユナだけは
俺の望む答えをくれる

ただいつだってAが俺の望む答えをくれたことはない。

「…それがっ。それが…Aの答えだったらいいんだけどな…」

不意に溢れそうになる涙をこらえようとしたら
ユナの細い腕が俺のお腹に回った

「…何してんの？慰め？」

「…慰め、じゃないって言ったらどうする？」

ユナの気持ちは薄々わかってるつもりだ
Aがイケメンで有名な人の話をしてる時も時折切なそうにこちらを見てるのがわかる

でも確信を持ちたくなくて
ユナは。何があっても変わらないでいてくれる存在でいて欲しくて

あえて知らないふりしていたのに。

「…同情？悪いけど
それしか思いつかないわ」

「それでいい…早く仲直りしなよね」

すっとゆっくり腕が離れていくとスタスタと立ち去る音がした。

少し背中をさすってみると
一滴だけ濡れている部分があった。