face 46 ページ46
校門に着くと、ホンビンさんは少しの風に揺られて、立っていた。
「ホンビンさん！」
わたしが名前を呼ぶとニコって笑ってくれる。
…はずなのに
今日は、今日だけは
笑顔も見せずにこちらへと視線を移すだけだった。
「…来てくれた。ありがとう。」
「いえ…」
ありがとうって口ではそういうのに。
目は口元は一切笑ってないんだよ？
ねぇ、気づいてるの？
気づいててわざとやってるの？
「…それでお願いって？」
「うん。たったそれだけのためにここに連れ出しちゃってごめんね。」
「全然！会いたかったので…」
会いたかったと言っても、笑わない。
ねぇ、今日に限ってどうしたの？
「…お願いはね。俺と別れて欲しいんだ。元々曖昧な関係だったから俺だけが付き合ってるって思ってたのかもしれないけど…
この言葉を言わなきゃ男として最低かなって思った。俺を憎んでもいいよ。
嫌いになってもいい。だから別れて。」
…え？
突然頭が真っ白になるっていうのは、こういうことを言うの？
頭が真っ白だなんて、あるわけないって
いつもみたいに笑い飛ばせないぐらいに、今は心が、頭が混乱してる。
嫌だって言ったらどんな反応するの？
今みたいな無表情？
それとも…困った顔する？
切なそうな顔をして、別れを悲しんでくれるの？
「…突然。すぎるよ…
そんなこと言われて…なんて返せばいいの？」
「うん。わかった。この言葉だけ返してくれれば俺は十分。
別れることを望んでるんだから、他の言葉なんていらないだろ。」
迷いもなく言い切る姿に。
光もなく暗い瞳に。
わたしは…なぜ恋をしてしまったんだろう。
「…うん、わかった。」
「ありがとう。こんな俺を好きでいてくれて。
これからは会うこともないだろうし、もう関係もないし。
お互い元気でいれたらいいね。」
…もう何も考えたくない。
何も言いたくない。今口を開けばホンビンさんを困らせる。そんなのバカなわたしでもわかるもん。
でも…でも。無理だよ。
やっぱり何も言わないのはわたしには無理だった。
「ホンビンさん！」
去っていく姿が止まる。
こちらを向いて怪訝そうな顔をする。
別にいい。伝えられれば。
「別れてくれてありがとう、なんて！ひどいよ！
わたし、望んでないのに…これでも気持ち押し殺して頑張ったのに！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プディン | 作成日時：2016年7月2日 12時
