face 36 ページ36
突然聞こえたヒョンの声に慌てて離れる。
罪悪感。重くのしかかる。
Aがヒョンの方を見て、すがるような目線をした。
ほんとに、気にくわないんだけど。
「…ヒョン。偶然じゃん、誰に用事？」
「セフナ、顔出せなくてごめんな、これからいけるように予定合わせるから。
俺は、Aに用事があるんだけど。」
「ふーん。俺もAに用事があるんだ、ごめんだけど今回譲って。」
「え…譲る以前にものじゃない。」
「そのお決まりのセリフみたいなのやめて。で、どっちにすんの？譲る？譲らない？」
「譲らないに決まってるだろ。Aと俺は付き合ってるんだ。」
「知ってる、知った上でお願いしてんの。こんなに誰かを好きになったの初めて。」
「っ…セフナ！」
「お前でもAは譲れない。」
「友達としてでもダメなの？ヒョンのせいで、俺ずっと友達いなかったのに。」
「…それは。」
「ほら、押し黙るしかないじゃん。もういい、ヒョンっていつまでも意気地なしだよね。」
「え、ちょっ、セフン！」
辛そうな顔をして顔を伏せてるヒョンを軽く睨んで、Aの腕を掴んで引っ張った。
Aの戸惑ったような声が後ろから聞こえるが無視してそこから歩いた。
「なんてこと言うの！セフン！ホンビンさんは辛い思いして…」
「Aに俺の気持ちがわかるの？辛いのはヒョンだけじゃないのに、好きな人しか心配しないの？」
目を見張ってその目から涙がこぼれる。
もう何回見ただろうか。
涙なんて見たくないのに、いつもなかせてばっかりで、笑顔が見たいのに。
「…好きな人の肩を持つのは仕方ないと思うよ。でもさ…俺を無視しないで。」
思わず口から出た本音。
俺が願っていたのは、もう一人になりたくないってこと。
「…一人にはしない。でもセフンを優先できないの。わたし…」
「わたし。ホンビンさんが好きなの。ごめん、ごめんなさい、セフン。」
微かに掴んでいた手も離れて
俺を見つめていた目も下へと下がって
少し口角を上げて、暗い道を歩いて行った。
つまりは…振られたってことだよな？
そんなに、ヒョンがいいかよ。
そんなに、俺じゃダメかよ。
こんなに辛くて悲しいなら
もう二度と恋なんてしない。
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作者名：プディン | 作成日時：2016年7月2日 12時
