spare～もう一つの顔～ (ページ17)

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「ビナさん…」

「もう黙れ。何も考えられなくなるぐらい気持ちよくしてやるから。」

「うん…早く…」

「わかったよ、もう口閉じろ。」

わたしが目をつぶったのが合図のように、ビナさんはわたしの鎖骨に口付ける。

熱くてくすぐったい感覚に身をよじると、ビナさんはわたしの腕を左手で掴んで上にあげた。

「っん…いや、手放してくださっい…」

「…放したら、身体隠すだろ？いい身体なんだからもったいない、俺に見せろよ、全部。」

低くて質の良い声は、耳に鮮明に聞こえてくる。
やだ…

ほんとはもっと囁かれたくて、触れて欲しいのに。
触られたとこ全部熱くて、おかしくなってしまいそうなのに。

「…ビナさっ…ん、やめて…」

「隠すな。それとビナさんじゃなくて、ビナって呼べよ、馬鹿女。」

「っじゃあ…ビナもわたしのこと、さらって呼んで…お願いっ…」

「ふっいい度胸じゃん？いいよ、何度でも呼んでやる、サラ…」

また、ほらまた、鮮明に聞こえてくる。
サラ…そう呼んでるのは確かにビナなのに、ホンビンに言われてるような気がする。

おかしいのかな…わたし。

でもこのおかしいぐらい気持ちいいこの感覚にずっと溺れていたい。

「急に大人しくなって…どした？」

「ただ…気持ちよくて…この感覚に溺れていたいからです。だめ？ビナ…」

目を見開いて、わたしを見つめるビナ。
その目はなぜか潤んで見えた。

「全然いい。ただ…声は我慢するなよ？」

わたしがこくんと頷くと、ビナの熱くて柔らかい唇がわたしの唇を覆った。

それからどんどん深くなって、欲とホンビンに向けられた愛のままに、身を委ねた。

間違ったことなんてしていないと。
わたしは何も悪くないんだと。

ただ目を開くたびに苦痛に顔を歪めてるビナが見えると、ホンビンの笑顔が見えて、顔を背けた。

溢れ出る涙を必死でこらえて、また快感と欲に身体を委ねた…

「…知ってる。全部。サラ…お前は俺がホンビンに見えるんだろ？」

ビナはサラの頭を撫でた。
もちろん眠っているから撫でられていることを知らない。

泣きそうになりながらもついてきてくれたサラ

知ってるから…大丈夫…

俺だって自分の欲をぶつけた。
サラだけが悪いわけじゃないのはわかってる。
だけど…

俺はいつだって、ホンビンに勝てないんだな。