01*真っ赤な嘘 ページ1
、
もしも願いが一つ叶うとすれば
彼に愛されますように、って願うのに。
TH「…A、寝てる？」
「…………」
TH「A？」
他の人から愛されなくてもいい
お金も名声も美貌も要らない
……ただ、彼の心だけが欲しい。
「痛ッ！何すんの……」
TH「寝たふりしてるから起こそうと思って」
「だからって耳を噛む？普通。」
TH「呼んでも起きないAが悪い」
「嘘でしょ…」
テヒョンに背を向ける形で
寝たふりをしていたら
私に腕枕をしていたテヒョンが
私の耳を突然噛んできた。
その上見事な責任転嫁。
…眠かったから少し無視しただけなのに。
TH「明日会社休みじゃん。泊まってく？」
「うーん…今日の夜中に帰るよ」
TH「なんで。」
「ドラマみたいから。」
TH「俺よりドラマなの？」
ごろん、と寝返りを打てば
すぐ側にあるその綺麗すぎる顔。
その瞳がじーっと私を見つめる。
「側にいて」って言うように。
だけど私は
そこまで可愛くて素直な女じゃないから。
「…また来週末に泊まりに来るから。」
TH「……約束ね」
「うん」
TH「A、俺のこと愛してる？」
服を着てないその身体に抱き締められる。
あぁまるで恋人のような甘い会話。
そして私は今日も嘘を吐く
「……大丈夫、愛してないよ」
この嘘はもう、何度目？
だけどそれにテヒョンは安堵して笑うから、
…テヒョンの側に居られるから。
私はきっとこの先も嘘を吐く。
TH「……ありがと、おやすみ」
「うん、おやすみ」
瞼を閉じたテヒョンが
すぐに寝息を立てるのを見て
その柔らかい髪を、思わず触る。
私の願いはテヒョンに愛されること。
テヒョンだけに愛されること。
だけど、こんな嘘をついて
側にいる時点でその願いは叶わない。
「(ーーーー…悪循環。)」
テヒョンを起こさないように
そっとベッドを抜け出して
散らばってる自分の服を纏う。
それから洗面所に行って、
少しだけ落ちてるティントを塗り直す。
「…………またね、テヒョン」
愛してる。
心の中でそう言いながら
私は彼の部屋を出た。
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作者名：ただのルート
| 作成日時：2024年2月28日 23時
