ねぇねぇ、あのさ。【東海オンエア】

シュウメイギクの花 ページ3

sideA

てつやが初めて吐いた花はリナリアの花だった



て「すげぇ、本当に花が出てきた」



『リナリアの花言葉はこの恋に気づいて』



虫「てっちゃんは誰かに片想いしてるの？」



て「言えん！」



『なんでよ！お手伝いするよ？』



て「言えんもんは言えん！！」



こうなったてつやが手強いのは昔からのことだ。



て「なあ、花吐くのを知ってんのは俺ら3人だけ？」



『そだよ。私たちだけ』



虫「りょうくんに言ってないのは意外だけどね」



『セコムには絶対言わん、だるい』



て「俺たちだけの秘密な！！」



そんなことを言って無邪気に喜んでいるが、私たちは花吐き病が治らない限りずっと苦しいままだ。




初めて花を吐いてから1年経った
相変わらずとしは彼女と仲良しだ

一方の私は、1年前はとしの彼女の話題に対して敏感に反応し、花を吐き泣いていたのに、今では興味が無くなってしまった

それどころか、私の頭の中は同じ花吐き病にかかったてつやで埋め尽くされていた。


『ねぇざわくん、私もしかしたらとしのこと好きじゃないのかも』


虫「あ、ようやく気づいた？」


てつやのこと好きになったんでしょってケラケラ笑うざわくんにはなんでもお見通しだった。



虫「だってAちゃんは、この1年でとしみつの事を想って花を吐くよりも、てつやのことを想って花を吐く回数の方が断然多かったんだよ。」



私が吐く花は、失恋系の花言葉から誰かを愛する花言葉の花に変わっていった事で確信した


『私、てっちゃんのこと好きなんだ。』


て「え？」


『嘘、てっちゃん聞いてたの？』


て「なぁ！それほんとかよ！？」


なんでこの男はこんなにキラキラした笑顔で聞いてくるのだろう。



虫「じゃあ僕はこれで。てつやがんばんなね」



て「これから話すこと、しっかり聞いてほしい」

て「俺はAのことが全部好きだ、でも１つだけ許せないことがある、佐倉って名字ダサくないか？だから俺と同じ名字になろうぜ」



涙がポロポロとこぼれてきた。
嬉しい、こんなに嬉しいことがあっていいの？



『小柳津もなかなかだけどね』


て「うるせ！」


『いいよ、小柳津になってあげる』


て「っしゃぁぁ！！」



私たちの想いが通じあった瞬間、2人して嘔吐感に襲われた。
私たちの口から出てきたのは白銀の百合だった。



『てっちゃん、大好きよ』


て「俺はそれの100万倍好きだ」



2人で笑いあえるこの時間が、大好きだ。

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