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第百五十二夜 ページ10

織田作が戦場の扉を抜けて進んだ先は、広大で天井の高い舞踏室になっていた



その気になれば百組のペアがバロック・ダンスを踊れそうな大広間だ



三階ほどの高さの天井から、朽ちたシャンデリアが斜めに垂れ下がっている



部屋の両側には、金刺繡の入った深紅のカーテンが垂れ下がっている



カーテンは至る所でほつれ、破け、かつての栄華を怨嗟するように部屋を暗く引き立てていた



広間の奥に二つ、手前に二つ樫の扉が設えられていた



織田作が部屋の中央まで歩いた時、背後から声がした



「一粒の麦、もし地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。死なば……」



織田作は即座に両方の銃を抜いて、振り返りつつ声のほうに構えた



その男はそこに居た



銀髪に銀衣、端整な顔の亡霊



銃を構えたまま、織田作は言葉を引き継いだ



「──死なば多くの実を結ぶべし」



幽霊は目を細めて笑った



「『ヨハネ伝』第十二章二十四節。見掛けによらず博識だな、サクノスケ」



樫の扉を前にジイドは立っていた



罠もなく、部下もなく、構えもない



織田作の照準はぴたりと敵の眉間に据えられている



ほんの少し人差し指に力を込めれば、弾丸が狙った場所に突き刺さるだろう



薄笑いを浮かべるその男の額、そのど真ん中に



「ご足労、感謝するよ」



織田作は狙いをつけ拳銃を撃った



頭を振って、ジイドが弾丸を回避した



「子供達には申し訳ないことをした」



ジイドは表情を変えず、再び同じように歩き出した



「だがその価値はあったようだな」



壁に沿うようにジイドが歩く



それを追って、織田作の銃口も水平に追随する



織田作は敵の頭部を狙って再び撃った



次はジイドの回避方向を異能で右と予測し、弾道をわざと右にずらして撃った



だがジイドは頭を逆、左側にそらせて回避した



「貴君の目はおれと同じだ」



ジイドは薄笑みのまま音もなく歩き続ける



「おれや部下と同じ、生存の階段から降りた目だ」



ジイドは武器に手をかけない



織田作が撃っても警戒する素振りすら見せない



織田作の背筋に冷気が伝う



「ようこそ、サクノスケ。おれ達の世界へ」

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 信乃☆   
作品ジャンル:アニメ
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信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時

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