第百五十一夜 ページ9
太宰は黙った
ほとんど初めて、太宰は自分の感情を説明できなかった
「私は……」
──苦い生を引き延ばしてまで追い求めるものなんて何もない
──この酸化する世界の夢から醒めさせてくれ
太宰の中で自分の声がこだまする
「私は、ただ」
絞り出すように太宰は言った
「納得できないだけだ。織田作が養っていた孤児たちの隠れ家のことを、ミミックに密告したのはあなただ。それ以外に私の選定した隠れ家の情報を入手できる人間はいない。あなたが子供達を殺した。織田作を、ミミックの指揮官に唯一抗しうる異能者を、敵にぶつけるために」
「私の答えは同じだよ、太宰君。私は組織の利益のためなら、どんな事でもする。ましてや我々はポートマフィア、この街の闇と暴力と理不尽を凝らせた存在だ。今更何を言うのだね」
太宰は理解していた
首領の計算も、心理も、計画の論理性も
ポートマフィアとはそういう性質の組織なのだ
論理的には首領が正しく、太宰は間違っていた
「だが……」
太宰は踵を返し、出口に向けて歩き出した
それに反応し、首領の部下達がいっせいに銃口を向ける
同時にAの手がピクリと動く
「君は行ってはならないよ太宰君」
首領が引き留めるように声を掛けた
「ここに居なさい。それとも、彼の許に行く合理的理由でもあるのかね?」
「言いたいことが二つあります、首領」
太宰は振り返り、細めた目で首領を見た
「ひとつ。あなたは私を撃たない。部下に撃たせることもしない」
「何故かね。君が撃たれることを望んでいるから?」
「いいえ。利益がないからです」
首領は微笑んだ
「確かにそうだね。だが君にも、私の制止を振り切って彼の許に行く利益などないだろう?」
「それが二つ目です、首領。確かに利益はありません。私が行く理由は一つ。友達だからですよ。それでは失礼」
太宰の前にAの作り出した狭間扉が現れた
いつの間にか首領の後ろからAは消え、太宰の隣に立っていた
部下達が銃を構え、引き金に指を掛けた
太宰達は全く気にすることなく、散歩でもするような足取りで扉へ向かった
部下達が命令を求めるように首領を見た
首領は腕を組んで太宰達の背中を薄笑みで眺めたまま、何も言わなかった
太宰達は扉を潜り、深い闇の中に沈んでいった
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
谷崎潤一郎の髪留め
ラッキーカラー
あずきいろ
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
105人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時