第百四十八夜 ページ6
首領は沈黙した
首領は太宰を見た
太宰も首領を見た
それは雄弁な沈黙だった
お互いに互いの心理を理解し、それに対する反論も理解していた
「……太宰君」
言葉なき舌戦を制し、口を開いたのは首領だった
「ひとつ訊きたい。君の計画は理解できる。だが織田君はおそらく、誰かの救援など望んではいないだろう。それについてはどう思うね?」
太宰は答えようとした
だが答えるべき言葉がなかった
首領は執務机の書類棚から封筒を取り出し、眺めながら云った
「太宰君。首領と云うのはねえ、組織の頂点であると同時に組織全体の奴 隷だ。ポートマフィアを存続させるためなら、凡百汚穢に進んで身を浸さなくてはならない。敵を減耗させ、味方の価値を最大化し、組織の存続と繁栄の為なら論理的に考え得るどんな非道も喜んで行わなくてはならない。私の言う事が判るね?」
首領は手に持った封筒を机の上に置いた
それは大きく黒い高級封筒で、端に小さく金色の箔押しが施されていた
中にはほとんど厚みのない何かが入っている様子だった
太宰はその封筒に何げなく目を留めた
それからはっとして息を止めた
「その封筒は___」
太宰の脳裏で何かが激しく動き、煌めいた
それはほとんど物理的振動となって、太宰の頭蓋を痺れさせた
「そうか」
太宰は絞り出すように言った
その顔は蒼白になっていた
「そういう事か」
太宰より数歩前に真実を知った日のあのAの様に
太宰はAに来る様促してからくるりと踵を返し、首領に背中を向けた
「失礼します」
「何処へ行くのかね?」
首領が太宰の背中に問いかけた
「織田作の許へ」
顔を向けず、執務室の出口である扉の前まで太宰は歩いた
Aが付いて来る気配はしない
だが代わりに飾りのついた把手に太宰が手をかけようとした時
太宰の背後で金属がぶつかるような、小さな部品が嚙み合うような音がした
太宰はその音を聞いてぴたりと手を止めた
そして自らの失敗を悟り、目を閉じた
小さな溜息と共に太宰は執務室のほうを振り返った
部屋には隣室から音もなく現れた黒服の構成員が四人いた
全員が自動小銃を構えていた
銃口は太宰に向けられている
太宰はそれを見ても驚かなかった
ただ室内を眺め、それから首領を見た
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信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時