第百六十三夜 ページ21
海岸線を見下ろす上空をプロペラ推進の軽飛行機が飛んでいた
飛行機の中には数名の乗員しかいなかった
「あと一時間ほどで次の任務地となる着陸地点に到着します」
乗客席で背広を着た若い男が話しかけた
「ああ、判った」
窓辺のリクライニングシートには丸眼鏡の男が座っており、手に持った数枚の紙片を熱心に見詰めていた
「……坂口捜査員。その写真は次の標的ですか?」
若い背広の男が話しかけると安吾は慌てて写真を服に仕舞った
同僚から隠すように
「いいや、何でもないよ。プライベートの写真だ」
写真を仕舞うと安吾は視線を窓の外に向けて、眼下の都市を物憂げに眺めた
--キ--リ--ト--リ--
横浜租界の地下水路を、複数の影が疾走していた
ミミック兵の残党が三名、暗い地下水路を逃走していた
洋館の戦いで前線にいなかった為に生き残った敗残兵だ
後方から黒い布が刃のように伸び、一人のミミック兵を両断した
残りのミミック兵は向き直り、短機関銃を乱射した
地下水路に銃火が明滅し、闇が切り取られる
「──効かぬ」
後方から黒外套の少年が現れた
生物のような黒外套が狭い通路の中で踊り、兵士達を次々に虐殺していった
「もっと強さを──更なる高みを!あの人が認めるまで、軍兵にも、銃にも、異能者にも!誰にも負けぬ!だから見よ!僕を見よ!」
さらに速度を上げて殺戮の舞踏を続ける芥川は叫んだ
悲痛ななまでの叫びは、横浜の夜に吸い込まれていった
--キ--リ--ト--リ--
横浜の街を見下ろす丘の上、緑の茂った山道のただなかに、海の見える墓地があった
そこにはいくつもの真新しい墓が並んでいた
白く小さく、名前の刻まれていない墓標だ
その墓標の前に太宰とAが立っていた
太宰とAは黒い喪服に身を包み、白い花束を持っていた
不意に強い海風が吹き、太宰は目を細めた
白い花束が風に揺られて音を立てた
「写真、ここに置いておくよ」
太宰は一枚の写真を取り出し、墓標の前に置いた
写真の中の四人は止まった時間の中に決して消えない笑顔を刻みつけていた
「堅豆腐、食べて貰おうと思っていたのになあ……」
太宰は目を閉じ、じっと立ち尽くした
「また、お供えしてあげましょう」
2人は立ち尽くしたまま動かなかった
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信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時