第百四十五夜 ページ3
織田作がクヌギの雑木林が繁茂する林道を抜けると、その洋館が見えた
最初に見えたのは、紫のスレート葺きの屋根と、宗教意匠の入った半円形の破風だ
暮れかかる夕日を受けて、林の中にぼんやり浮かび上がっている
砂利敷きの小路を登った先に短機関銃を携行した二人のミミック兵が居た
見張りらしい
「ちょっと訊いていいか?」
織田作は歩きながら無造作に二人に声を掛けた
驚いたミミック兵が銃口を織田作のほうに向ける
だが織田作は両脇の拳銃囊から拳銃を抜いていた
左右同時に二発撃った銃弾はミミック兵の額にめり込み、後頭部を叩き割って後方に抜けた
二人のミミック兵は背後の木々に血と脳漿を撒き散らし、ほとんど何が起こったかも判らず絶命した
死体が地面に崩れ倒れる湿った音がほぼ同時に林に響いた
織田作は拳銃を仕舞い、死体に目を向けないまま再び歩き出した
アプローチを抜け、洋館の正面玄関へ向かった
彼は洋館の屋根に近い三階の小屋裏を見た
採光窓の向こうに、狙撃銃を提げた見張りの哨兵がいる
織田作が狙撃兵が気付くルートを避けて接近したため、すぐ真下に接近されても侵入者に気がつかなかったのだ
織田作は指を弾いてその兵に合図を送った
狙撃哨兵はその音に気付き、織田作の姿を見て仰天した
兵士が狙撃銃に手をかける前に織田作は拳銃で兵の頭部を撃ち抜いた
兵は大きくのけぞり、後方の階下へと落下して派手な音を立てた
見張りが落ちる音で中の兵士も異状に気がついただろう
織田作は普段通りの足取りで正面玄関前のポーチまで来て、一度立ち止まった
そして煙草を取り出し火をつけて、濁った煙で肺を満たした
織田作は自分の手を見た
つい今しがた三人の人間を殺した手を
それはどこまでも自分の手だった
殺しを避けてきたころの自分の手と寸毫も変わらない
指に殺意は宿らない
引き金にも殺意は宿らない
銃弾にも殺意は宿らない
殺意が宿っているのは頭の奥にある彼の精神だった
洋館の中が騒がしくなりはじめた
怒声に床を踏み鳴らす音、銃弾を装塡する音
織田作は正面玄関のドアから横に移動した
そして石の柱飾りが彫刻された隣の壁に背中をつけた
背中を硬い石壁につけたまま織田作は腕を横に伸ばして、木造の玄関ドアをノックした
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信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時