第百四十四夜 ページ2
人々はいつも通り、思い思いの方向に歩いていた
きっと向かうべき場所があり、会いに行くべき人がおり、帰るべき家があるのだろう
それが人間が生きる世界、織田作が小説で書こうとした世界だ
あの子供達も、本来ならばそちらの世界に行き、彼等の一員として街を思い思いに歩くところだったのだ
──彼等は皆、静けさを手に入れた。誰も彼等から静けさを奪うことはできません
昔に聞いた安吾の言葉を思い出した
子供達は今ちゃんと静かな場所に居るだろうか
幽霊になって現世を彷徨ってはいないだろうか
ジイドや、俺のように
織田作は5人の子供達を思った
すると、向かって歩いてくる小柄な青年にぶつかった
「うわあ!」
織田作は何ともなかったが青年はバランスを崩して尻餅をつき、手に持っていた荷物が路面に散らばった
「君、何するんだい!前を見て歩かなくちゃ駄目じゃないか!そんな高い処に目があるなら前を見るのは得意だろ?あーあ、社長に貰った探偵道具が…」
織田作は散らばった荷物を拾う青年を手伝った
記録紙に筆、写真機、鑑識用の証拠品保管袋
まるで殺人事件の証拠採取係のようだ
「あんたは警察か?」
織田作が何となく訊ねると
「警察ぅ?」
青年は細い目をさらに細め、心底厭そうな顔をした
「あんな無能連中と一緒にされちゃ困るよ!僕を知らないのかい?じき日本中が知る事になる名だ、善く憶えておくんだね!僕こそは世界最高の名探偵、江戸川__」
「すまなかった」
織田作は青年の台詞を途中で遮った
「先を急ぐので失礼する」
「おいおい、愚か者だねえ君、この名探偵と対話できる機会を逃すなんて!僕の能力を見ればそんな無下には出来なくなるよ!疑うのなら見せてあげよう。そうだな、君が急ぐ理由は──」
陽気で尊大な青年は笑ってから織田作を見た
「君は─」
ふとその目が窄まる
青年の周囲の空気が急にひやりとした
青年の瞳に何か非人間的な光が宿った
「君」
青年が先程とは打って変わって静かな声で言った
「悪いことは言わない。目的地には行ってはいけない。考え直すべきだ」
「何故だ?」
「だって、行ったら君…死ぬよ?」
織田作は新たな煙草に火をつけ、それから青年に背を向けて再び歩き出した
そして歩きながら言った
「知っている」
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信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時