検索窓
今日:10 hit、昨日:4 hit、合計:149,730 hit

第百四十四夜 ページ2

人々はいつも通り、思い思いの方向に歩いていた



きっと向かうべき場所があり、会いに行くべき人がおり、帰るべき家があるのだろう



それが人間が生きる世界、織田作が小説で書こうとした世界だ



あの子供達も、本来ならばそちらの世界に行き、彼等の一員として街を思い思いに歩くところだったのだ



──彼等は皆、静けさを手に入れた。誰も彼等から静けさを奪うことはできません



昔に聞いた安吾の言葉を思い出した



子供達は今ちゃんと静かな場所に居るだろうか



幽霊になって現世を彷徨ってはいないだろうか



ジイドや、俺のように



織田作は5人の子供達を思った



すると、向かって歩いてくる小柄な青年にぶつかった



「うわあ!」



織田作は何ともなかったが青年はバランスを崩して尻餅をつき、手に持っていた荷物が路面に散らばった



「君、何するんだい!前を見て歩かなくちゃ駄目じゃないか!そんな高い処に目があるなら前を見るのは得意だろ?あーあ、社長に貰った探偵道具が…」



織田作は散らばった荷物を拾う青年を手伝った



記録紙に筆、写真機、鑑識用の証拠品保管袋



まるで殺人事件の証拠採取係のようだ



「あんたは警察か?」



織田作が何となく訊ねると



「警察ぅ?」



青年は細い目をさらに細め、心底厭そうな顔をした



「あんな無能連中と一緒にされちゃ困るよ!僕を知らないのかい?じき日本中が知る事になる名だ、善く憶えておくんだね!僕こそは世界最高の名探偵、江戸川__」



「すまなかった」



織田作は青年の台詞を途中で遮った



「先を急ぐので失礼する」



「おいおい、愚か者だねえ君、この名探偵と対話できる機会を逃すなんて!僕の能力を見ればそんな無下には出来なくなるよ!疑うのなら見せてあげよう。そうだな、君が急ぐ理由は──」



陽気で尊大な青年は笑ってから織田作を見た



「君は─」



ふとその目が窄まる



青年の周囲の空気が急にひやりとした



青年の瞳に何か非人間的な光が宿った



「君」



青年が先程とは打って変わって静かな声で言った



「悪いことは言わない。目的地には行ってはいけない。考え直すべきだ」



「何故だ?」



「だって、行ったら君…死ぬよ?」



織田作は新たな煙草に火をつけ、それから青年に背を向けて再び歩き出した



そして歩きながら言った



「知っている」

第百四十五夜→←第百四十三夜


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

谷崎潤一郎の髪留め

ラッキーカラー

あずきいろ

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした!


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 信乃☆   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

信乃☆(プロフ) - ウイさん» ありがとうございます!アニメの方も二期に入りましたね!それとウイ様の応援を糧に頑張っていきます! (2016年10月6日 22時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 良いです!良いです!とっても面白いです! 更新宜しくお願いします! 頑張って下さいね! 応援してます! (2016年10月6日 21時) (レス) id: 22b43887b9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年10月2日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。