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第8話 ページ8









テスト直後も部活はあるらしく、体育館の入口で汗を垂らした佐久早聖臣に遭遇した。


「あ」

「…………和田」


目を細めて、考える素振りを見せてから、私の名前を呼ぶ。

キスまでしたのに、その相手の名前すら瞬時には出てこないらしい。


「待ってろ、今日」

「え?」


そう言って戻っていく。

どうやら私と一緒に帰るつもりのようで、校門を出たら反対方向なのに、佐久早聖臣本当にバカだ。

でも私も大概バカなようで、律儀に練習が終わるのを待った。

しかし、佐久早聖臣はバカなので、自分で待ってろと言ったくせにその約束すら忘れていた。

校門を出ようとする彼を追いかけるはめになる。


「私家こっち」

「…………送る」

「チャリのがはやい」


結局、二人乗りで私の家まで送ってくれた。

乗る前に、手に沢山消毒液をかけられたけれど、正気だろうか。


「テストどうだった?」

「普通」

「あっそ」


私たちの会話は盛り上がりにかけているけれど、別につまらない訳じゃない。

キスをしたというのに、気まずさすら感じない。

家に入る前に、彼はまた触れるだけのキスをしていった。

その日を境に、私は何となく佐久早聖臣と一緒に帰るようになり、その度に手に消毒液をかけられ、キスをされた。


(キスフレンド……)


付き合っている訳ではない。

でも、今更突っぱねることもできないし、そんな気力もない。

彼はまるでまたねの挨拶のようにさりげなく口付けを交わすのだ。


佐久早聖臣とのキスは心地よかった。

バカの癖に、そういう知識はあるらしい。生意気だ。







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作者名:小鉢メニュー | 作成日時:2020年5月25日 21時

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