第7話 ページ7
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たった一週間で、あの佐久早聖臣と仲良くなった自負はある。
それに、少し甘やかしすぎたという自負も。
「……佐久早」
フルネームで呼ぶのはなんだか気が引けた。
触れた唇が熱を持って、ゆるく痺れていくのが分かる。
「多分好きになった」
彼は、そんなこと思ってもないように、眉間にしわを寄せながら言った。
ストレートだ。
バカはやっぱり真っ向勝負しかできないというのか。
「……気のせいでしょ」
実際、勉強をしている時、そんな素振りは見られなかった。
私を意識している感じもなかった。
でも、潔癖症な佐久早聖臣が、不用意にキスをするとは到底思えない。
すると、今度は私の顎を引き寄せる。
私はそれを受け入れた。
不思議と気持ち悪くはなかった。
なぜあなたは佐久早聖臣のキスを受けいれましたか?と訊かれたら、不快ではなかったから、と答える。
(私って好きじゃない相手ともキスできるんだな)
しみじみとそんなことを考えながら、離れた唇を恋しく思った。
「…………帰る」
パッ、とすぐに背を向けて、暗い夜道を歩いていく。
数秒経って、頭の整理をした後、私も脇に停めた自転車に跨る。
「…………」
不思議で、フワフワとした気分がずっと続いていた。
(展開早すぎじゃない?)
佐久早聖臣と出会って約一週間。
本人が私のことを好きだと気づいたの、多分さっき。
(バカだな、あいつ)
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作者名:小鉢メニュー | 作成日時:2020年5月25日 21時