救いようのないバカ【佐久早聖臣】 (ページ13)

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第13話ページ13

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「これ、なんて読む」

「あー……りんり」

「りんり」

放課後、佐久早のクラスでこの間のように机をくっ付ける。

追試の勉強三日目だった。

幸い、赤点科目は現代文の一教科だけで、試験と同じ評論文をテストに出すという。

佐久早は色々と運がいい。

私が帰宅部で、それに勉強ができて、暇人で、よかったね、と内心つぶやいた。

「ぼうせんぶまるいちとあるが、このときの……」

「筆者」

「ひっしゃの……」

「主張」

「しゅちょう、としてただしいものをすべてえらべ」

歪な発音で、問題文を読み上げる。

本人は至って真面目だが、私にはどうしても脳内で平仮名に変換されてしまうのだ。

「こういう時はね、」

私は机に身を乗り出した。

すると、カタ、と佐久早の体が椅子から離れる。

顎に添えられる、骨張った手。

「ちょ、佐久早、っ……」

貪るようなキスだった。

それでいて、割れ物を扱うかのように、神経質。

今までだって数え切れないくらいキスをしてきたけど、こんなに熱が篭もるキスは初めてだった。

「……は、」

僅かに離れた時にやっと息ができた。

「なに、突然……」

「したくなった」

「……」

バカはTPOが分からないのだろう。

呆れてため息しか出てこない。

「悪い」

「……もういいよ」

許してしまうのも、佐久早のバカパワーなのか。

すると扉のあたりで、ガタッと音がした。

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