第2話 ページ2
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そして放課後、古森には聖臣の教室で待っていて、と言われたので自分の勉強をして大人しく待つことにする。
しかし、10分たっても20分たっても、佐久早聖臣は一向に現れなかった。
(もしかして騙された?)
そんな考えが頭をよぎる。
(知らない間に古森の反感を買っていて)
(怒った古森が、仕返しに、……)
一度考え出したら止まらないもので、ポンポンとネガティブな推理が浮かんでくる。
(もしかしたらもう教室の鍵も閉められてたりする?)
不安になってスライドさせると、あっさりと開いた教室の扉。
すると、そこにはひとつの人影があった。
見上げたら、その無情な双眸が私を捉えていた。
「佐久早……聖臣」
やっと来たのか、と安堵しつつ、マスクをしている彼のものすごい威圧に嫌気がさす。
こういう威圧的な男は嫌い。シンプルに怖い。
彼をこんなに近くで見たのは初めてだ。
さすがの貫禄というか、なんというか。
「……誰」
ぼそ、とそんな声が聞こえた。
(……はあ?)
誰、って。
もしかして古森は彼に何も伝えていないのだろうか?
そうだとしたら、勝手に俺に勉強を教えようとする奴、という構図が彼の中で出来上がってしまう。
「私、隣のクラスの和田……Aって言うんだけど」
弁解をしようと思ったが、口から出てきてくれたのはただの自己紹介だった。
自分の不甲斐なさに落ち込んでいると、彼は私をふい、と無視して自分の席に向かった。
そして、エナメルバッグに教材を詰めていく。
明らかに帰ろうとしている様子で、このままでは私の待っていた時間が無駄になる。
彼の腕を掴んで引き留めようとした時、その教材からパラ、と一枚のルーズリーフが落ちた。
『ほうかご きょうしつ べんきょう となりのクラスのじょ子と』
マッキーペンのようなもので殴り書きされている。
(なんで平仮名……?)
不審に思いながらも、それを拾い上げる。
「落ちたけど」
佐久早聖臣は、そのルーズリーフを見て、ハッと何か閃いたような表情を浮かべて、それから私をまじまじと見つめた。
「あぁ、そうだ、勉強」
佐久早聖臣、あんたもしかして忘れてた?
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作者名:小鉢メニュー | 作成日時:2020年5月25日 21時