救いようのないバカ【佐久早聖臣】 (ページ1)

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第1話ページ1

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同じクラスの古森に、「聖臣の勉強を見てやって欲しい」と頼まれたのは、今朝のことだ。

HR後に突然私の席へやってきて、高身長な彼が、私みたいな平凡な女にパンッと手を合わせるその光景は異様なものだっただろう。

実際、クラスメイトはなんだなんだと私たちを眺めていたし。

「佐久早聖臣わかる？」

もちろん知っている。

喋ったことはないが、彼は学校で、いや全国的にも有名だから。

「わかるよ」

頷くと、ホッと息をついて、それからまた口を強く結ぶ。

「聖臣の勉強を見てやって欲しい！」

「え？」

素っ頓狂な私の声。

古森は手を合わせたまま、苦笑いをうかべる。

「駄目かな」

「えーと……」

(駄目とか駄目じゃないとかじゃなくて、)

突然過ぎて頭回らないんだよ、と内心文句を言う。

佐久早聖臣は、学年の上位50名に載るくらいの頭の良さだった気がする。

それならば私が勉強を見てあげる必要はない。

それに、どうして私？

確かにいつも学年の順位は一桁をキープしているが、私じゃなくても良かったはずだ。

「テスト一週間前だから部活もないんだ。和田、教えるの上手そうだし、頼んだよ」

考えといて、という言葉もなしに古森は自分の席へと戻っていく。

どうやら決定事項らしい。

(私だって自分の勉強あるのに)

少々強引な頼みにため息をついたが、佐久早聖臣の頭がいいなら、そんなに心配もいらないのかもしれない。

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