第29話 ページ8
「じゃあ私行くね。他にも行くところあって…」
「そう。帰りは暗くなるだろうし、気をつけてね」
「うん」
私はそう答え、荷物を持って病室を出ようとする
が、私は病室を出る前に伯母さんに問いかける
「伯母さん」
「なに?」
「…伯父さんの長期出張のこと、聞いてたの?」
「えぇ、聞いてたわよ」
「…何も思わなかったの?」
「いつものお仕事だもの。どうして?」
伯母さんは平然と答える
「…ううん、なんでもない。何となく」
「そう…?」
「じゃあ、また着替え持ってくる」
「ありがとう、助かるわ」
ガラガラ、と後ろで扉が閉まる
(伯母さんも、気にしてないんだ)
そんなことを思いながら、完二君の病室へ向かう
(まだいるかな…もう退院したかな…)
思ったより時間がかかったため、もう既に退院している頃だろうと私は考えていた
日は、まだ落ちてはいないが、オレンジ色になりつつあった
そして完二君の病室に着き、コンコンコン、とノックをする
今度は「はーい」と女性の返事が聞こえた
「中原です。入ってもいいですか?」
「あら、瑠伊ちゃん。どうぞー」
許可を得たので、引き戸を開けて中へ入る
内装は伯母さんの部屋と変わった様子は見受けられない
「こんにちは、瑠伊ちゃん。また来てくれたのね」
「おばさん、こんにちは。もう退院出来るって聞きました。本当に良かったです」
「えぇ、本当にねぇ。でも、この子ったらまだ寝てるのよ」
おばさんがベッドに目を向け、私もその視線を追うと、先程見た山より大きな山があった
「あぁ、なんだか静かだと思ったら…」
「ほら、完二。瑠伊ちゃんが来てるわよ。もう退院するんだし、いい加減起きなさい」
おばさんが声をかけると、その山がモゾモゾと動き、完二君が体を起こす
「んあ…?んだよ、ババア…」
「ババアはやめなさいって言ってるでしょ!」
「完二くーん、来たよー」
私は完二君に向かって手を振る
「おう…瑠伊か。お前また来たのかよ」
「完二。せっかく来てくれてるのにその言い方はないでしょう」
「うっせ」
「あはは。でも、もう退院出来るんでしょ?良かったね、おめでとう」
私は微笑みながら完二君に向かって話す
「ありがとよ」
完二君も笑ってそう返してくれる
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作者名:ホノノさん | 作成日時:2020年3月26日 15時