人魚姫 #Hayato Komori Ⅱ (ページ36)

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Alan side

「もうさ、しばらくは俺のこと忘れてよ」

わかってたよ、全部

『え……？』

今日俺が誘われたのは、きっと罪悪感からでしょ？

「今、Aと隼を邪魔してるのは俺

今日だって誘ってくれたのはただ一緒に過ごしたいからじゃないでしょ？」

心の中には、隼がまだいるんでしょ？

「俺は、隼とAが結ばれても嬉しくない」

隼に、会いたくてたまらないんでしょ？

「だけど、Aが悲しむのも嬉しくない

無理して隼の存在を消そうとしてるのはもっと嬉しくない」

俺が、お兄ちゃんじゃなければきっと隼なんかよりずっとずっとAを幸せにできたのに

「もう何回も言うけど、本当に今日で最後」

『……』

Aが寂しそうにしてくれるから、少しジンときて元気を装った

「だから楽しむよ！」

俺が無理をしていることはわかってるんだろうけど知らないふりをしてくれたAと兄妹として色々楽しんだ

ちょっと、人が増えてきたなぁ

そう思ったそのときだった

「Aっ！」

隼の声が聞こえた気がした

今の、聞き間違いだよねきっと

だってあいつ、俺が今日のこと話したとき興味なさそうにしてたじゃん

ふと後ろを見るとそこにAはいなかった

置いてきた、とられる

隼に、Aとられる

とっさにそう思った

人の流れとは逆向きに歩く俺、周りは白い目で見てくるけどお願い間に合って

見つけたAは、1人だった

「ごめん、気づいたんだけど人混みに流されて」

だいぶ焦ってる、俺

焦ったって意味ないのに、とられて正解なのに

『大丈夫、来てくれるってわかってたから』

もうとられないように今度はAの手を握った

もちろん、兄妹として

空いた手で少しだけマスクに隙間を作って息を吸いながら焦ったーって多分気づかないうちに言っていた

「とられるかと思った」

『……とられる？』

「こっちの話」

本当にわからなそうに首をかしげるけどそれでいい、何もわからなくていい

……隼が、玲於と一緒に後ろにいるなんて気付かなくていい