人魚姫 #Hayato Komori Ⅱ (ページ4)

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TETSUYAさんは開店して1時間半ほど経ってからやってきた

「今日はじゃあ……、マンデリンで」

いつものカウンター席に座ってメニューも見ずに言う

『了解です』

「こら、客にそれでいいのか」

『哲也さんはいいんです』

なんて私が軽く調子に乗っていると、オーナーがぽんと軽く私の頭を叩く

「哲也を軽い態度で見ていいのは俺だけだ」

「いやなんでよ」

哲也さんが仕事とかで宿泊に来たときはもちろん、そうじゃないときもよく来てくれる

『お待たせいたしました、こちらマンデリンでございます

ごゆっくりどうぞ』

ゆっくりと音を鳴らさないようにコーヒーをカウンター席に置くと、哲也さんは早速一口飲んだ

「自分のお店のコーヒーより好きかも」

『それはダメですよ』

「そうだよなぁ、後輩もよく来てくれるし

隼なんか暇なときはほぼ毎日来てくれるし」

心臓が飛び跳ねた気がした

隼、ってあの隼だよね

そうだよね、あの隼しかいないもんね

わかってるよ隼がコーヒー好きなこと

「でも隼には何も言わない

ここにこんないいお店があるの知ってるのは俺だけだから」

それなら安心だ、もし今会ったら抑えようとしていた気持ちが抑えられなくなる

哲也さんはいつも、コーヒーを飲み終わってしばらくゆっくりするとすぐに帰っていった