人魚姫 #Hayato Komori Ⅱ (ページ20)

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私を呼ぶその声が玲於にも届いたようで

亜嵐の少し前で首だけ私に向けた

「Aッ……」

玲於は、徐々に嬉しそうな顔になっていき嬉しそうな顔で隼を見た

対照的に隼の顔は暗い

「隼！」

玲於がそう隼の名前を呼ぶけど隼は背を向けて店を出ていってしまった

「おい隼っ！」

『いいよ玲於、しょうがないよ』

口では強がってそう言ったけど本当は苦しい

私だって怒るよ、突然家にお世話になったくせになにもしないでいきなりいなくなられたら怒る

それに、ずっと一緒にいたいってお互い言ったのならなおさら

「話してきな」

どこからか現れた察しのいい霧谷さんが言う

言葉に甘えて私は亜嵐たちのいた席に向かった

「色々聞きたいけど」

玲於は、そう言うけど顔はとても晴れていた

玲於は亜嵐の隣に座って、私は2人の向かい側に座った

私と亜嵐が外の紅葉を見るもんだからいつのまにか玲於も同じようにして外を見ていた

『いいよ、聞きたいこと聞いても』

私が言うと、玲於は私の目をちゃんと見て優しい顔で優しい声で言う

「元気だった？」

質問が、あまりに予想外で涙ぐんでしまったけど、なんとか涙をこぼさずに元気とだけ答えた

てっきり、今までどこで何してたのとか聞かれると思ってた

「そっか、ならいいよ」

また外に顔を向ける玲於

『えっ、それだけ？』

「んー、じゃああと一つ

このホテルのおすすめは？」

そんなことでいいの、私が拍子抜けしているとまた同じ質問を繰り返した玲於

『……最上階にある露天風呂

今の時期は夜にライトアップされた紅葉を観ながら入るのがおすすめです』

ここは一従業員としてしっかりとおすすめをいう

「じゃあ夜みんなで入るか～」

玲於が明るく言う

隼は、どんな思いで私に背を向けたのかな

やっと会うことができたのに