人魚姫 #Hayato Komori Ⅱ (ページ19)

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コーヒーを運んでやることがなくなってカウンターに戻る

亜嵐はコーヒーを飲みながら、今の時期すっかり赤くなった外を見ていた

オーナーは裏でなにか作業をしているのか出てこなかった

そんなときだった

心臓が、どくっとした

久しぶりのこの感覚

聞こえた、隼の声が

「どこいったんだよ～」

「まじ困る、亜嵐くん励ますための会なのに主役が消えるって」

玲於の声も聞こえる

亜嵐くん励ますための会私が、それだけ亜嵐を苦しませているの？

そんなことも思ったけど考えてるうちに声はだんだん近づいてきてる

亜嵐もその声に気付いたのか、私をじっと見ていた

ごめんそんな顔をしながらただじっと私を見つめる

……私も、逃げちゃダメ

ようやく会えるんだから、ここでどんと待ってなきゃ

うちの店は、一応他のところと区切られてはいるけどカウンター側じゃない方の壁もドアも透明だ

だからギリギリ見えてしまう

「えっ、コーヒー屋さんじゃん寄ってこうよ」

隼の声がまた聞こえる

お願い来ないで、…………来て

「寄り道してる場合じゃねえだろ」

「いや亜嵐くんいるかもしんないじゃんここに」

見えた

2人とも同じような格好をして歩いている

髪色は2人とも若干変わっていたけど、他は何も変わらない隼と玲於だ

ドアが開いた合図のベルの音がして、本来なら静かにご来店ありがとうございますって言わなきゃいけないんだけどそれも言えなかった

「あっ、本当にいた亜嵐くん」

玲於は私に見向きもせずに一直線に亜嵐のところへ向かった

一方で隼はその後を追わなかった

見れない、隼がいるはずの方向を

見たらきっと目が合ってしまう、そう思いながらもゆっくり隼のいる方に顔を向けた

隼は、私を見ていた

入り口のドアからほんの数歩進んだところで私に気付いたようで、そこにただ突っ立って私を優しいような、悲しいような目で見ていた

「A……」