人魚姫 #Hayato Komori Ⅱ (ページ18)

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開店してすぐに、予期せぬ客がやってきた

「A、」

『亜嵐っ……、』

何も知らない霧谷さんは、私たちに気を使ってくれたのか、店の奥へと消えていく

亜嵐はいつも哲也さんが座っている席に腰かけた

「メンバーでちょっと泊まってて、抜けてきた」

『そうなんだ』

亜嵐と別れて、亜嵐が本当のお兄ちゃんだってわかったあの日から初めて会う

私はお兄ちゃんに会いにきたはずなのに、お兄ちゃんにやっと会えたはずなのに気まずさは拭えなかった

「……ずっと謝りたくて」

なにを？

何をずっと謝りたくてこの3ヶ月半過ごしてきたの？

「Aに辛い思いさせちゃったこと、消えろって言っちゃったこと」

『えっ、それは……、』

「本当に、悪かった」

そう、本当に申し訳なさそうな顔で言うから私は言いたかったことも言えずに別にいいよとしか言えなかった

本当は気づいていたんでしょう

私がまだ心のどこかで隼を想っていること

「だから、もう兄妹になろう」

『うん……』

兄妹になろう

亜嵐がどんな気持ちでその言葉を言ったのかはわからない

表情はいつもの亜嵐だ

だけどきっと、辛くて今にも泣きたい気持ちに違いない

亜嵐といると安心できたのは、血が繋がってたからなんだね

「俺ちょっとあっちの席移るわ

今度お互い整理ついたら普通にどっか出かけよう」

『うん、』

「ブルーマウンテン、1つ」

そう言って亜嵐は窓際のソファー席へと移動した

亜嵐の背中が、遠くなっていく

背中がもう辛そうで、でも亜嵐を辛くさせている原因は私だから

亜嵐が好きでいてくれている今の私には、どうすることもできない