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「い"…ぁッ」


「…」




最初は紙で切った様に、次に力を入れて、然して骨まで届く様に。太宰は自分の鼓動がAに聞こえているのではないかと思う程に鳴っているのを感じていた。ナイフを這わせた跡から真っ赤な其れが流れ出てくるのを見て太宰は、はっ、はっ…と息を漏らす。


ゴツン…と何かにぶつかってナイフが止まった。骨だ。其の音を聞いて太宰ははっと我に返る。突然、冷水を頭上から勢い良く掛けられた様な気分だった。




「ァ…ッはァ」




Aは笑っていた。血が流れる自分の左手の薬指を見て、Aは恍惚とした笑みを浮かべる。ぞくりと太宰は震えた。


が、太宰は直ぐに立ち上がり救急箱を手に戻ってきた。然して血を愛おしそうに見つめるAの手を取り優しく血を拭き取る。指を一周する深い刺し傷は太宰の心をきつく締め付けた。自分でやった癖に…太宰は自嘲する。


丁寧に包帯を巻き終えるとAは不服そうな顔をしていた。大方、好きな血が見えなくなったからだろう。然し傷口からウイルスでも入って化膿してしまえばいけない。太宰はそうAに言い聞かせるがAの機嫌が治ることはなかった。




「…何で見えなくするの」


「だから、酷くなったら駄目だからって云ったじゃないか」


「君が折角僕の為に斬ってくれたのに」


「可愛い事云ってもだァめ」


「太宰君の意地悪」




ごめんって、と太宰はAの体を抱き寄せる。突然の太宰の大胆な行動に目を白黒させるAは先刻迄思っていた許さないと云う気持ちが綺麗さっぱり消えている事に気付かなかった。太宰の勝利である。


手を背中に回し、一定のリズムで優しく叩かれると不思議とAは瞼が重くなって来た。之じゃあまるで首も据わらぬ赤子の様ではないか。Aは自分自身にそう云うが近付いてくる眠気には耐えきれなかった。







数分後、太宰の胸に体を預け小さな寝息を立てるAの姿がそこにあった。太宰は僅かに微笑み乍らAの髪を一房手に取り指で弄んでいる。


Aの左手の薬指には白い包帯が巻かれており、其れはまるで男女が将来を誓い合った際に装着する指輪の様にも見える。太宰はAの手を取り、包帯に静かに接吻を落とした。

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プラム(プロフ) - そうなんですね、ありがとうございました! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - プラムさん» コメントありがとうございます。現在執筆中の場面は太宰さんの年齢を15歳としているので私ではなく僕とさせて頂いております。混乱させてしまい申し訳ありません! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
プラム(プロフ) - あの、太宰さんの一人称は僕ではなく私なのですが… (2018年5月27日 19時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...  
作成日時:2018年5月26日 18時

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