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首領が死んだ。
新しく首領に為った森から其の事を告げられた時、Aはどう思うのだろうと太宰は気に成った。
先日Aの真逆の一面を見た太宰だが、普段仕事中は何ら変わりなく、外に出る任務でも特に普通だった。太宰の気が向いたらと云う約束は守ってくれている様で、Aの方から斬ってくれと頼まれる事は無いし太宰との関係も良好だ。まるであの話が凡て夢だったかの様な気さえする。
然して其の十数日後、森と太宰は首領を殺した。あのままではポートマフィアは勿論、ヨコハマが終わってしまっていた。太宰は特に何も思わなかった。先代首領に思い出は無い。然しAはどうだろう。太宰より先にマフィアにいたAは。
「病死…ねぇ」
「A?」
「…まぁ、僕もあの人のやり方は嫌いだったから。ありがとう」
「…何の事だい?」
後で森さんにも云いに行こう。そう告げたAに太宰は敵わないなと思った。
太宰は心の奥底で、Aに嫌われたくないと願っている自分がいる事に至極驚いた。Aが笑えば僕も楽しい。Aが悲しめば僕も悲しくなるし、元を潰してやろうと思う。Aが怒れば僕も怒る。Aが嫌う者は僕だって嫌おう。Aが嫌な事はきっと僕はやらない。そうだ、之は依存だ。僕はAに依存しているのだ。
だから、Aが望む事も叶えたいと思うのだ。
「ねぇ、A」
「どうしたの?」
「君の事、斬っても良いかな」
ぱあぁ、と笑顔に為ったAが愛おしいと感じた。此のまま誰の目にも触れない何処かへ連れ去ってしまいたい。僕以外が触れる事を許したくない。
僕がAに依存する様に、Aも僕に依存してしまえば良いのに。
夢だと思ってAの腕を深く刺したあの日からずっと身に付けている同じナイフを懐から取り出す。Aは待ちきれないと云った様子でいそいそと服の袖を捲った。
数年後、大人に為った"私"は此の時の僕を、好奇心が旺盛な少年だったと云う。否、好奇心と云うのだろうか。自分の感情を身の内に抑えきれない只の子供だ。欲しいと思う気持ちを抑えきれなかった。周りの子供より大人びていると良く言われてきたが、太宰だって子供だ。15歳の、思春期真っ盛りのただの子供なのだ。
太宰は白く美しいAの手を取り、すらりとした左手の薬指にナイフを這わせた。
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プラム(プロフ) - そうなんですね、ありがとうございました! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - プラムさん» コメントありがとうございます。現在執筆中の場面は太宰さんの年齢を15歳としているので私ではなく僕とさせて頂いております。混乱させてしまい申し訳ありません! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
プラム(プロフ) - あの、太宰さんの一人称は僕ではなく私なのですが… (2018年5月27日 19時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年5月26日 18時