太宰君 ページ1
*
「…如何したの、そんなにだらけて」
ノックもせずに部屋に入室した男、太宰は部屋の主が大きな黒いソファに身を沈ませているのを見て思わず口に出してしまった。自分が知っている彼は真面目で何時も周りを気遣う視野の広い好青年だった筈だ。若しかして、調子が良くないのか?
太宰は彼に押し付ける心算で持ってきた書類をテーブルの上に置いてソファに駆け寄る。
「A、調子が悪いのなら寝室に行きなよ。僕の肩を貸すから」
「……、」
「聞き取れなかった、何て?」
ソファの前で中腰に為って話し掛けると起きていたのだろう、返事が帰ってきた。然し声が小さく太宰は聞き取ることが出来なかった。仕方なく聞き返す。だが、其の言葉は太宰に届かなかった。
また声が小さかった訳ではない。聞き取りやすい様に相手の口元に太宰は耳を近付けたのだから、聞き取れない筈がない。只、相手の言葉が言葉として脳に留まらず耳から反対の耳へ通り抜けて行ったのだ。数秒経って、太宰は言葉の意味を理解する。
「…えっ、いやいや…えっ?」
「頼むよ、君だけが頼りなんだ…」
「Aの"お願い"を聞いた10人中10人が僕と同じ様な反応をすると思うのだけれど」
「自分でやると手加減してしまうんだ。痛いから」
「ねぇ話通じてる?コミュニケーション取ろうよ。会話のキャッチボールって知ってるかい?僕は球(ボール)を優しく投げている心算なのだけれど、Aは僕にドッヂボールの要領で投げつけている気がしているよ?」
「球(ボール)は痛いから嫌だ」
「速球を投げているのはAだからね?大体、痛いのが嫌なのだったら何で…」
何で、"自分を斬ってくれ"だなんてお願いするの
太宰には目の前の美少年が偽者なのではないかと疑ってしまう程に混乱していた。普段の彼は斬ってくれだなんて突拍子もない事は云わないし、太宰の自、殺癖だって率先して止める様な人物だ。…ん?
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プラム(プロフ) - そうなんですね、ありがとうございました! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - プラムさん» コメントありがとうございます。現在執筆中の場面は太宰さんの年齢を15歳としているので私ではなく僕とさせて頂いております。混乱させてしまい申し訳ありません! (2018年5月27日 20時) (レス) id: 457e9c6f45 (このIDを非表示/違反報告)
プラム(プロフ) - あの、太宰さんの一人称は僕ではなく私なのですが… (2018年5月27日 19時) (レス) id: 30ffb06e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年5月26日 18時