9話 ページ11
及川side
「及川、今から保健室行ってくるわ」
放課後になり荷物を整理していると横からそう言ってきた
「俺も行こうか？」
「でも部活あるじゃん」
確かに部活はある
でも、やっぱりAの事が心配で
集中出来ないような気がした
「岩ちゃんには言っておくからさ、駄目？」
「...いや、心強い。ありがとう」
きっと微笑みしながら言ってるんだろうな
なんて思うと一層はやく顔が見たくなった
こんなに近くに居るのに、遠く居るように感じる
貴方side
及川に着いてきてもらいながら保健室へ目指す
先生は何も知らないかもしれないけど、それでも
話したかった
私は、解決策を知る前に 気づいて欲しかっただけなのかもしれない
バレー部だけじゃなくて、他の人にも
少しでも話して気が楽になりたかっただけなのかもしれない
そんな事を思いながら目の前にある保健室のドアを開けた
「小鳥遊先生...」
「Aさん？どうし...」
先生の目には私が見えなくても話だけでも聞いて欲しかった
「Aさん、こっちにおいで？ 及川君も」
いつもの様私と及川を呼んで 自分の机の近くにある椅子に私達を座らせた
「先生、私...。」
いざ目の前にすると話せない
気持ち悪がられたらどうしよう なんてマイナスな事ばかり頭に浮かんでくる
下を向き唇を噛み締めた
左手に温もりを感じる
それは及川の物で私の手をぎゅっと握ってくれていた
「話さなくても大体わかったわ。 今から言うことをしっかり聞いてね？」
小鳥遊先生はいつも通り優しい口調で話す
「今貴方は "透迷人間"になっているわ｣
「...迷う..?」
「そう、これはね愛する人からのキスじゃないと戻れない」
「キス..?」
隣に座っている及川も驚いたのか目を見開いていた
「...ねぇ、Aさん。貴方好きな人、いるでしょう？」
「...はい。」
「でも、伝えるのが怖い 関係を崩したくないから
違う？」
「...はい。もし伝えて断られて関係が崩れたら
私...。」
また涙が出そうになる
「私もね貴方と同じ症状になった事があるの」
「先生も？」
「えぇ。その時好きな人がいたの、でも勇気がなくて言い出せなかった。自分で決めつけてた、どうせ振られるから って でも、この症状が出たお陰で私は今幸せなの。｣
薬指にはまっている指輪をそっと撫でる
先生は私の手を優しく握ってこう言った
「ーーーー」
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作者名：su | 作成日時：2018年6月13日 21時
