２.蝕まれる心 ページ6
「わ、悪かったわよ……その、昨日、水かけて」
「______え？」
中庭の噴水前に呼び出されたAは、訥々とした謝罪を受けて空いた口が塞がらなかった。
これまで散々人に騙されてきたせいで猜疑心が拭えず、素直にその言葉を受け取れない。何か裏があるのではないか、とそんなことばかり考えてしまい固まっていると、女が勢いよく頭を下げた。
「誤解だった。あなたが私の彼氏を奪ったわけじゃなかった。だから、本当に悪いことをしたと思ってる、ごめんなさい……！」
他人と関わるのが苦手なAは、こういった時、素直に許すべきなのか、疑るべきなのか、どのように反応するのが吉なのか分からず困り果てていた。それも予想していなかった展開になったので、思考回路が停止しているも同然だった。
「ちょっと、聞いてるの？」
Aが何も言わないことに痺れを切らしたのか、女の声に怒気が混じった。Aは更に混乱して、扇動されるように咄嗟に口を開いた。
「ま、まず、考えてもみてよ！私みんなから嫌われてるのに、あなたの彼氏を奪えるわけないじゃない！」
今度は女が口を開ける番だった。
______やってしまった。絶対に呆れられた。
Aは頭から額にかけて急速に体温が失われてゆくのを感じる。また、水をかけられるのか、もしくは殴られるのか。そう先走る思いで身構えていると、女は豪快に笑い声を上げた。
「あははっ、いや、アンタ嫌われてるって自覚してたんだ！」
「え、は、え……？」
「そうね、確かにアンタに奪われるはずもないか！」
「ちょっとまって、それ嫌味？」
Aが顔を顰めると、彼女はハッとして人を小馬鹿にするような笑い方を止めてこちらを見つめてくる。
「ごめん、笑っちゃって！アンタってこんなに面白かったの？」
「え、面白い？」
「うん、知らなかった！てっきり、御影くんに守られてるだけのお嬢様かと思ってたから」
「______は？」
「あ、気を悪くしたらごめんね？でも、ほら、御影くんモテるでしょ？だから、ずっと御影くんを独り占めしてるあなたをみんな悪く言うのよ、嫉妬ってやつ？」
まるで、玲王といるから嫌われてると言われているように感じて、Aは顔を顰めるばかりだった。これでは、謝られているのか嫌味を言われているのか、更に分からなくなってくる。
だが、折角誤解が解けたことを無駄にはしたくなくて、Aは一方的に黙って話を聞き続けた。
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黄泉(プロフ) - 七星さん» はじめまして、コメントありがとうございます！またこのお話をお読みくださり、面白いとのお言葉までありがとうございました！🥳 わっかります、むしろ、彼にならどんな手を使っても奪われたいくらいですよね笑 どこかでご縁がありましたら、またお願いします！ (2023年2月7日 23時) (
レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
七星 - とっても面白くて、一気に読んじゃいました.ᐟどんな手を使ってでも玲王くんなら許しちゃうかもです(笑) (2023年2月7日 22時) (レス) @page34 id: 0897eb2537 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 真昼さん» はじめまして、コメントありがとうございます🙇♀️続きが楽しみだと言って頂けてとても嬉しいです！あと少しで完結になると思いますので、どうぞもうしばらくお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m (2023年2月4日 11時) (レス) id: fe076a4b2d (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 続きが楽しみです！ (2023年2月4日 10時) (レス) @page19 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄泉
| 作成日時：2023年1月28日 10時
