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歪な恋獄の中で ページ30

玲王の築き上げた城の中には、可愛い姫君が住んでいる。それは、ようやく念願叶って手に入れた最愛の人だった。
家族を守るためだと言い、何も知らないまま運命を受け入れてからというもの、彼女は片時も離れずに玲王の傍にいる。

何も知らないのに、こうして玲王の愛を受け入れるようになった彼女は、実に憐れで、どうしようもなく愛おしかった。
実際は玲王があれよこれよと手を使って、Aをこの城に囲えるようにしただけに過ぎないというのに、彼女は知る由もないだろう。

むしろ、今のAはそれを知りたがろうとしない。知っても失ったものは戻って来ないとわかっているのだ。
だから、玲王はその分たくさんのものを彼女に与えた。玲王がいなくては生きていけないということを、もっと知らしめるために。

玲王は望まれるがままに、何だって叶えてあげた。
けれども、その裏側では自分のことしか愛せないように他の男の影があれば排除した。ずっとそうやって躾けてきた。
彼女はいつしか、疑いの心を無くした。
女は弱いから、主の帰りを待つことが役目なのだと思い込んでいる。両親が教育を怠っていたからだ。両親の勝手な価値観が彼女の人生を狂わせたのだ。
そんな可愛くも哀れであるAに「玲王!」と呼ばれて目を向けた。

「みてみて!海ってこんなに綺麗だったの?!」
「お前、海見るの初めてだっけ?」
「危ないから、昔は近寄ったらダメって言われてたの」

幼い頃から枯れぬ花のように清廉されたAは、いくつになっても夢を追いかけるような輝かしい瞳をしていた。
けれど、その瞳には生涯自分しか映らないのだと思うと、時々自分は酷い男なのかもしれないと思う時がある。しかし、玲王はそんな彼女を見るのが好きで、手離すことが一生出来なくなってしまった。

「ねえ、玲王、早く泳ごうよ」
「あ、ばか、引っ張んな______」
「きゃっ、冷たい!」

まだ水着にも着替えてないというのに、そそっかしい彼女に腕を引かれてそのまま二人海の中へと落ちてしまった。
水を含んだ洋服は重たくて身動きが取りづらいのに、Aはそれさえも楽しそうにしている。

けれど、次第に波に流されると、その小さな身体ではバランスを取るのも難しいらしい。急激に深くなる海中で、Aが呑み込まれそうになったのを玲王が抱き支えた。
足が水中に浮いて、思うように動けないAは玲王にしがみつく他なかった。そのまま腕を引いて抱き込んでしまえば、光を知らずに育ってきたAの白い頬が分かりやすく赤色に染まってゆく。

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設定タグ:ブルーロック , 御影玲王 , ヤンデレ   
作品ジャンル:アニメ
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黄泉(プロフ) - 七星さん» はじめまして、コメントありがとうございます!またこのお話をお読みくださり、面白いとのお言葉までありがとうございました!🥳 わっかります、むしろ、彼にならどんな手を使っても奪われたいくらいですよね笑 どこかでご縁がありましたら、またお願いします! (2023年2月7日 23時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
七星 - とっても面白くて、一気に読んじゃいました.ᐟどんな手を使ってでも玲王くんなら許しちゃうかもです(笑) (2023年2月7日 22時) (レス) @page34 id: 0897eb2537 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 真昼さん» はじめまして、コメントありがとうございます🙇‍♀️続きが楽しみだと言って頂けてとても嬉しいです!あと少しで完結になると思いますので、どうぞもうしばらくお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m (2023年2月4日 11時) (レス) id: fe076a4b2d (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 続きが楽しみです! (2023年2月4日 10時) (レス) @page19 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年1月28日 10時

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