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もしかして、私は、ミヒャエルのことが好きなのだろうか。
そんな恋情がふと湧き出てきたので、私は勢いよく首を横に振って、それはダメだろうと否定をする。たかが数回身体の関係を持っただけの男と会える、会えない騒ぎをして一喜一憂するなんて、答えは導かれてしまっているような気もするが、それは否定し続けなくてはならない。
なぜなら、私はミヒャエルの名前しか知らない。どこの国で生まれ、普段は何をしている人なのか。彼はあまりに謎が多すぎる。脈がないかあるかの問題ではなく、彼がまず何者なのかを知らなくてはならない。
あの時、やめておけば良かった。関係を続けなければ良かった。
思い返せばあの日から、私はミヒャエルを拒むことが出来なかった。押しに押されてしまったのも理由の一つではあるけれど、関係を終わらせたくないと希ったのは私自身だ。
前途多難の恋に、私はどうしようもなく落ち続けている。彼の一番にはなれないし、彼の恋人になれるだなんて尚更ありえない話だった。
これ以上彼に溺れてしまえば地獄を見るのは分かっているのに、私は舞い上がるような気持ちで返信をする。それに今更悔やんだとしても、後の祭りだ。
「じゃ、今日帰るから!」
「は?今から?」
「うん、授業ノートだけ明日見せて!」
友人があからさまに嫌そうな顔をしながらも軽い返事をしたのを確認して、私はこっそりと後部の扉から講義を抜け出した。普段から友人の出席を私が取っていることもあるので、今日くらいは身代わりになって欲しい。
その後、私は大学からの最寄り駅で電車に乗って、待ち合わせ場所まで向かう。まだ一限目の途中でもあったため、化粧も髪型も崩れていないことは鏡で確認できた。
待ち合わせをした駅の外に出ると、人の群れに呑まれそうになった。見渡す限り人しかおらず、混雑した中でミヒャエルを探すのは難しいようにも思えたが、一際目を引く黄金色の髪に、すらりと背が高く、圧倒的な存在感を放つ彼の姿は容易に分かってしまった。
「ミヒャエル!」
「シー」
ミヒャエルは誰かに正体を暴かれたくないのか、視界も不明瞭そうな真っ黒なサングラスをかけて、私が名前を呼んだのを応えずに、代わりに人差し指を口元に押し当ててきた。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします!(?)完結おつかれさまです!これからもおうえんしてます! (2023年4月3日 22時) (レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました!ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです!!完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました!また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます! 改めてお疲れ様でした! (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年2月11日 16時