彼らは恋愛王

izw×mzkm3 ページ22

「……伊沢さん……」

『お！電話出た！悪いな、記事が終わんなくって着信に気が付かなかったんだ、どうした？颯』

一気に涙があふれてきて、俺はそのまま涙声で話をした。

「いざわさ……怖い夢……おれ、一人になるのかもしれなくって……」

自分でも何を言っているのか分からなかった。でも伊沢さんは心穏やかに話してくれた。

『大丈夫だ。颯、お前は一人じゃない。少なくともたとえ離れても、俺は味方で、一応恋人のつもりでいる。だから安心しろ』

安心しろ、一人じゃない。その言葉が胸に沁みる。

「はい……はいい……」

『俺は、颯だけの恋人だ。だから、疲れたら羽を休めに来い。大空を舞う鳥だってずっと飛んでいるわけじゃないだろ？安心して休める木を見つけて休んでいる。だから、お前の止まり木は俺だ。ゆっくり休んでいいんだよ』

「はい……でも、飛べるところまでは飛びます」

『うん、それでいい。颯は颯だ。何かあったら止まり木に来い。ゆっくり休みに来い。帰る巣は必ずあるからな？』

「……うん」

不思議だ。伊沢さんの言葉は安心できる。

『落ち着いたか？』

「はい、もう大丈夫です。ご心配おかけしました」

『良かった。ほかに何かあれば遠慮なく電話でもLINEでもしてこい』

「はい、連絡します、お休みなさい、伊沢さんもゆっくり休んでください。俺の止まり木があなたなら、あなたの止まり木もきっと俺だと信じていますから」

『フフッ、そうだな、その時が来たらゆっくり止まらせてもらうよ。お休み』

プチッと切れた通話だったが不思議とさっきみたいな不安はない。

たとえ遠く離れていてもこの人は俺の止まり木という名の大切な恋人だ。

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