Step 42 ページ44
【sideA】
火照る顔を手であおぎ、熱をしずめる。
いくら安心したといえど、抱きつくなんて恥知らずだ。
煉獄先生が怒らなかったのは、なんでだろう……
ぐすっと鼻をすすると、煉獄先生は「そうだ、」と言い服のポケットからなにかを取り出した。
「これは、君のだろう? A少女」
すっと取り出したそれ。
……!!
これは……ストラップだ。海が閉じ込められたようなとんぼ玉の。
でもどうして先生が……?
「店の前に落ちていたから、君のだと思い拾っておいた! よかったよかった!」
『あ、ありがとうございますっ』
私は顔を見上げてお礼を言うと、笑顔を浮かべていた。
きゅんと胸が高鳴った。
………きゅん……って……?
私が知らぬ感情に戸惑っていると、煉獄先生が手を差し伸べてきた。
えっと、これは繋げってこと?
「また迷子になると大変だからな! 手を繋いでおこう」
『……えっ?!?!』
顔にぶわっと熱が集まる。
でもいくらなんでも、心を許しすぎだ。
この手をとったら私が軽い女みたいじゃないか。
私は『バカにしないでください!!』といって手を払った。
煉獄先生は気にしてないように笑い、
「なら、俺をしっかり見てついてきてくれ」
と言った。
後ろをついてきて、と言われただけなのに、どきどき、心臓がうるさく鳴っている。
身体に残った温もりと煉獄先生の香り。
きゅうっと胸が締め付けられる気がした。
なんか変だな、私。
……なんで煉獄先生を意識してしまうんだろう。
216人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢世 | 作成日時:2020年11月22日 23時